・腎臓・内分泌・代謝内科サブスペシャルティコース

診療科の概要

腎臓内科の仕事は、循環器内科や消化器内科などと比べると、やや分かりづらいと感じられるかもしれません。けれど透析を始め、確固たる専門性を持っており、腎生検、透析用のカテーテル挿入、PTAなどの手技も手頃にあります。「考える業務と、手技のバランスがいい」と言えます。

急性腎障害の診断や治療・慢性腎臓病の管理・ネフローゼ症候群やIgA腎症などの腎炎に対する腎生検による診断と治療・電解質異常の対処・二次性高血圧の診断と治療(原発性アルドステロン症など)・血液透析・腹膜透析・血漿交換などのアフェレーシス治療・シャント不全に対するPTAと、業務内容は多岐に渡ります。当院の腎臓内科は、腎生検の件数が多いことが特徴で年間40-50件行っており、上記業務をまんべんなく習得することが可能です。当院は総合病院なので、他科依頼症例も豊富です。

腎臓内科は、「症例を経験する→正しい知識を身に付ける→上級医とディスカッションして理解を深める」というプロセスが非常に大事です。診療科の決定に迷っている研修医の方もおられるでしょうが、「きちんと勉強して考えることが好きな人」には、向いていると思います。

参考までに、半年間当院腎臓内科をローテートしてくれた 防衛医科大学 田之上桂子先生の診療実績を示します。当院腎臓内科で後期研修を行えば、これくらいの研修は出来ます。

入院症例162例(腎臓内科75例+併診50例+透析担当症例37例)。腎生検15例。シャントPTA 10例。CVカテーテル挿入11例。PDカテーテル挿入 1例。

特に興味深かった症例:急激に腎機能が悪化した管内増殖性糸球体腎炎の症例。IgG4関連腎症+ANCA関連血管炎の症例。抗GBM抗体陽性 EGPAの症例。FSGS治療経過中にTMAを合併した症例。MCNSの頻回再発ネフローゼ症候群に対してリツキシマブを導入した症例。ネフローゼ症候群で発症したIgA腎症の症例。高カルシウム血症で精査して原発性副甲状腺機能亢進症と診断し手術に至った症例。低ナトリウム血症で精査して過去の妊娠にて Sheehan症候群を発症したと診断した症例。多発性骨髄腫の腎障害、血液腫瘍の腫瘍崩壊症候群の併診症例(数例)。ADPKDの腹膜透析導入症例。静脈高血圧でシャント肢の浮腫を認め、左腕頭静脈にPTAとステント留置を行った症例。チロシンキナーゼ阻害薬により腎機能悪化と浮腫を認めた症例。シャント仮性瘤感染症でシャント瘤切除を行った症例。原発性アルドステロン症の負荷試験および副腎静脈サンプリング(数例)。高血圧緊急症(3例)。

きちんと学べばかなりの経験になります。ぜひ当院腎臓内科で後期研修を行ってください。

スタッフ

  • スタッフ
    • 3名(医長、常勤の合計)
  • レジデント
    • 4名
  • 診療科全体の医師数
    • 7名(男性:5名、女性:2名)
      うち専門指導医数:3名

専門研修プログラム名および全研修期間(うち東京医療センター以外での研修期間)

  • プログラム名
    • 国立病院機構東京医療センター内科専門医育成プログラム腎臓内科サブスペシャルティコース
  • 期間
    • 3年または4年(うち東京医療センター以外で1年間)

全研修期間のスケジュール例

  4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
1年 腎臓内科 選択科 選択科 選択科
2年 連携施設研修 連携施設研修
3年 腎臓内科(選択科も可能) 腎臓内科
4年 総合内科専門医試験受験(内科サブスぺシャリティ専門プログラム研修中)

年次ごとの主な流れ

研修項目 研修場所・内容 研修期間
1~2年目
臨床 入院患者を中心とした診療 24ヶ月
腎生検 指導医の下で検査 24ヶ月
PTA 指導医の下で検査 24ヶ月
選択 希望により、院内他科ローテート(1~2科) 0~
(内科系他科、救急科、他) 6ヶ月
3(~4)年目
臨床 病棟:腎臓内科チーフレジデント 12~
外来:指導医の下で外来患者の診療 12~
選択 希望により、専門施設において指導医の下で研修 0~
(腎病理、腹膜透析、腎移植 他) 12ヶ月
臨床研究 東京医療センターにて臨床研究。
希望により関連施設にて臨床、基礎研究。
 

プログラムの特徴

  • 腎生検の症例数が多く、腎炎について色々な症例を経験できる。
  • 他科依頼症例が豊富。CHDFやアフェレーシスについても学べる。
  • シャントPTAが習得できる。
  • 電解質異常や二次性高血圧など、時に軽視されがちな項目もきちんと学べる。
  • プログラムの定員 1~2名/年(内科全体で10名)
  • 令和3年度の採用者数:1名、令和2年度の採用者数:1名
    (そのほか、慶應病院 腎臓内分泌代謝内科プログラム1名、
          東邦大学大森病院 腎臓内科プログラム1名)

症例数一覧(2020年度実績)

コロナ禍で例年よりも 腎生検件数が減っています

症例 数(年間)
1 腎生検 30
2 血液透析導入 32
3 血液透析 1749
4 血漿交換 25
5 血漿吸着 7
6 G-CAP 29
7 腹膜透析導入 0
8 持続血液浄化療法 135
9 PTA(内シャント) 64

施設認定

  • 日本透析医学会(認定施設)
  • 日本腎臓学会(研修施設)

連携施設

  • 慶應義塾大学病院
  • 東邦大学大森病院
  • 上尾中央総合病院

当直業務等

  • 当院内科当直
    • 後期研修医は、研修年数に応じて 3-5回/月 担当します。
  • 腎臓内科オンコール
    • 10-15日/月。実際に呼ばれて来院するのは 月1~2回程度です。

週間スケジュール

 
午前          
午後   新入院カンファ/回診      
  透析カンファレンス   PTA 症例カンファ
  抄読会(不定期)   腎病理カンファレンス  
  腎生検      

各カンファレンスの解説

新入院カンファレンス 膠原病内科・糖尿病内科と合同で行う。新入院患者の確認。
透析カンファレンス 透析室スタッフと行う。透析患者全体の状態の確認。
症例カンファレンス 症例から学んだ内容に関して UpToDateなどを参考にして考察。
病理カンファレンス 月1回。腎生検3例を、病理医と病理標本を見ながらディスカッション。

研修修了後の進路

腎臓内科医の最終的な進路は以下のように分かれます。

  1. 大学機関に勤める 
  2. 病院勤務を行う 
  3. 開業する(雇われ院長を含む)

他科との最大の違いは、透析での開業(雇われ院長)のニーズがあることです。専門性が、将来の職の安定につながる可能性があります。

過去に当院勤務を終えた医師の進路は、大学病院医局(慶應義塾大学、東京大学、東邦大学、防衛医科大学)が多いです。一般病院(埼玉メディカルセンター)に就職した医師もいます。
当院腎臓内科は、慶應義塾大学病院とのつながりが強いので、慶應入局は大歓迎です。その際に出身大学は問いません。いずれにせよ、研修終了後の進路に関しては後期研修医の希望を聞きながら、出来る限りサポートをしたいと思います。

令和3年度(2021年度)、日本内科学会の認定医制度の研修を行なう方は、現在の認定医制度に基づいた内科系サブスペシャルティ専門医をこれまで通り取得することができます。
(日本腎臓学会、日本透析学会、日本内科学会 受験資格あり)

研修中の専攻医の声

金子 晴菜(後期研修医)

担当医として患者を受け持ち、腎機能だけでなく併存疾患も併せて内科的管理を行います。常にスタッフの先生が見守ってくださり、適宜指導いただけるので、プレッシャーを感じすぎずに、ほどよい緊張感をもって研修生活を送れています。新内科専門医制度が始まり、J-OSLER等大変かと思いますが、他科との関わりも多く症例に困ることはありません。腎臓内科ローテーションを心からお勧めします。

植松 光(後期研修医)

当院で初期研修を行い、東邦大学大森病院入局後、1年出張で戻ってきた者です。初期研修の時から、多彩な症例を多く見ることが出来ました。
また、腎生検を始めとした内科手技から、透析アクセス造設などの外科手技を幅広く経験することが出来ました。他科との関係性も良好で、貴重な症例に出会う機会が多いため、学会発表など学術的な面でも十分な経験を積むことが出来ます。後期研修先としては、学術的に優れていること、医局として風通しが良いこと、相談しやすい環境が整っていることが、良い点です。
日々の診療で疑問に思った事を早期に解決できる環境や指導医との関係性が、臨床医としての実力を高め、自信につながります。パラメディカルの方々も気さくで優しい方が多く、私生活ともに充実した医療センターならではの研修ができると思います。

小田原 幹(元後期研修医)

当院は市中病院でありながら病床数、外来患者ともに非常に多く、症例の数に困ることはありません。一般的な血液透析の導入や急性腎不全、急性血液浄化、IgA腎症から 腹膜透析導入や抗GBM抗体の急性腎不全まで、後期研修開始わずか2ヶ月でも多岐に わたる症例を経験できています。ベッド数も多いため他科からの併診として電解質異常や 急性腎障害、透析依頼など多く、多岐にわたる疾患を診ることができる事が強みだと 考えています。

押田 卓磨(元後期研修医)

医師4年目で、腎臓内科2年目の押田と申します。慶應大学からの派遣で1年間当院での研修をさせていただいております。
当院の腎臓内科はスタッフの医師が4人と層が厚く、その下につく形になっており、患者を後期研修医で分配して担当します。基本的に自分の考えたことを実践させてもらえるので非常に力がつき、またスタッフの先生たちは非常に教育的なため、分からないことに関してとても分かりやすく教えていただけます。腎臓内科全体で集まる時間も多いため、相談もとてもしやすい環境です。
腎臓内科の症例だけでなく、他科からの依頼や透析患者に関してもレジデントも併診する ので、幅広い症例を経験できます。手技に関してもバスキャスを始めPTAや腎生検等 積極的にさせていただけるので、非常に実力がつきます。
入院患者が多くなると、確かに忙しくなる時がありますが、それ以上に勉強になり スタッフの先生を始め、病棟・透析室の看護師さんやMEの皆さんがとても優しいため、 とても仕事がしやすい環境です。是非皆さんも当院で研修しましょう!

杉田 絵里那(元後期研修医)

当院の初期研修を終え、引き続き後期研修をさせて頂けることになりました。私が当院の研修を志望した最大の理由は、日頃から指導医の先生方と専攻医が症例についてディスカッションする機会が多いことです。各症例の勉強のみならず、臨床推論の仕方、文献の参照法など、臨床医として必要なことを身につけられる環境が整っています。
また、独学では勉強のしづらい腎病理についても、毎月症例ベースの勉強会でご指導くださり、大変勉強になります。当院は膠原病内科や血液内科の入院症例が多いため、それらの科の疾患の腎病変(ループス腎炎やANCA関連血管炎、腫瘍崩壊症候群)についても診断から治療まで幅広く経験できます。病棟、外来、透析、腎生検、PTAなど、並行して経験できるのは、大変である一方、ひとくちに腎臓内科といっても様々な活躍の仕方があるのだなと、とても前向きな気持ちで研修生活を送っています。

田之上 桂子(元後期研修医)

指導医には毎日熱心にご指導いただき、何を聞いても親切に教えてくれました。育児中でありましたが、病休や早退などにつき、理解いただけました。

指導医の声

松浦 友一(医長)

私もこの年になるまで色々な病院に出張に出ましたが、腎臓内科は所属する病院によって、あまり症例に恵まれない場合があります。すると、その仕事内容が一般内科とあまり変わらない状況になり、腎臓内科専門医としては不十分な研修となってしまいます。当院は周辺の病院や開業医から紹介される患者を診ていることから、かなり専門性の高い症例が集まります。また総合内科という科があるので、腎臓内科は一般内科とは一線を画した仕事を行っています。
若手医師の時期に、当院のような施設で経験を積むことは皆さんのキャリアにとって間違いなくプラスになると、自信を持ってお勧めします。

門松 賢(医長)

将来、腎臓内科とは決めていない方でも構いません。当院で研修して頂いたレジデントの中には、違う道に進んだ方もいます。違う道に進んだとしても、必ず学んだことは役に立っています。私自身もまずは、全身管理のある腎臓内科を学んでみようと思い、腎臓内科の道に進み、今に至ります。
まずは、飛び込んでみてください。やりたいことがあれば、できるだけ私たちがサポートします。一緒に働こう!!

藤村 慶子(医員)

腎臓の機能は生下時のネフロン数からも影響を受け、その後の加齢性変化に加え糖尿病や高血圧症や脂質異常症など生活習慣病が相まって最終的には慢性腎臓病に至ります。腎臓のagingすなわち人間のagingを診る科といっても過言ではないのかと思います。それ故、総合的な内科のスキルが必要とされ、それを駆使しながら診療する醍醐味がありま す。また透析導入になる患者を一人でも多く減らすべく予防するために患者に日々啓蒙し 診療していくことが腎臓内科医に与えられた使命と思っております。
東京医療センターでは臨床的な技術や能力を高めるとともに、各専門医取得(腎臓学会、透析医学会など)に向けて幅広い症例を経験できるようサポートいたします。病院全体のレジデントの先生の数も多く、腎臓内科内だけでなく他科のレジデント同士で症例を通し、協力しあって切磋琢磨出来る環境です。是非とも一緒に働きましょう!!

病院見学について

良い医師になるために重要なプロセスは、

  1. よく学習する事
  2. 多くの症例数を経験する事
  3. 上級医の指導を参考にする事

です。すると「上級医との相性が合う」施設をいかに選ぶかが、ポイントになります。
数回の病院見学だけで、その施設が自分にマッチしているかの判断は非常に難しいかと思いますが、ぜひ東京医療センター腎臓内科に見学に来てください。みなさまと我々は「相性が合う」でしょうか。それを確かめに来ていただければ、幸いです。

expand_less