泌尿器科

外来担当医表

診察場所 初診/再診 診察時間
診察室1 初・再診   〇西山 〇西山 〇門間(再診) 飯ケ谷(1,3週)
香野(2,4週)
矢澤(5週)
〇門間
診察室2 初・再診   服部 矢木 矢木 矢澤(2,4週)
(午後)
服部
診察室3   午前 中村 中村 金子 古平 三浦(1,3,5週)/
中西(2,4週)
午後    
診察室5     井上 金子 野原    

◇印は副院長
〇印は医長

概要・基本方針

患者のみなさまへ

ー患者の皆様に優しく,安全で質の高い医療をめざしていますー

  • 治療の効率化と均一化、また治療がわかり易くする目的でクリニカルパスを積極的に導入しています
  • 病気について的確な説明を心がけています。
  • 他医師のセカンドオピニオンを求めることは患者の皆様の大切な権利ですが,それは当科のスタッフにとっても勉強になることが多く、大いに歓迎いたします。ご希望があれば遠慮なくお申し出下さい。逆に当院でも他院からのセカンドオピニオンを受け付けております。
  • 地域連携室があり、近隣の一般開業医とも積極的に連携しており、当院退院後の経過観察や内服薬の処方などの在宅医療を推進しています。
  • 疼痛の軽減を目的とした緩和治療も積極的に行っています。
  • 積極的な治療・研究を推進しています。また、その実績等を日常診療に還元すべく、学会参加や研究発表も積極的に行っています。

心のこもった最新かつ最良の医療を患者の皆様に還元すべく努力を重ねています。
何か相談や希望等ありましたら当泌尿器科へ御連絡ください。

診療科の特徴

泌尿器科では、副腎、腎臓、尿管、膀胱、尿道などの男女尿路系疾患、および精巣、精巣上体、前立腺などの男性生殖器疾患を扱います。
主に排尿の回数が多い、尿がもれる、尿が出にくい、排尿時に痛みがある、尿に血が混じるなど、排尿に関する異常を扱います。症状がなくても検診などにより異常が指摘されることもあり、これらの異常の原因を診断し治療を行うのが泌尿器科です。その領域は、悪性腫瘍、尿路結石症、尿路性器感染症、前立腺肥大症、過活動膀胱、尿失禁、高血圧や肥満を引き起こす副腎腫瘍、神経因性膀胱など多岐にわたります。

当センターは地域がん診療拠点病院(高度型)であり、当科では悪性疾患の治療に力を入れています。特に前立腺がんについてはロボット支援下内視鏡手術や小線源療法を含めた各種放射線治療で全国でも有数の治療実績があります。また、ロボット支援による手術を腎部分切除および膀胱全摘術にも導入しています。 当科では安全で質の高い医療を患者の皆様に提供することを目指しております。
何かお悩みのことで我々にできることであれば是非お手伝いをさせて下さい。

前立腺癌に対する東京医療センターの取り組み

男性の前立腺癌罹患率は2015年よりトップとなっていますが、その死亡率は6位であり比較的予後の良好な癌とされています。適切な治療を行えば、ステージ3(癌が前立腺被膜を超える状態)であっても10年生存率が100%と報告されています(国立がん研究センター「2008年にがんと診断された患者の10年生存率」の統計より)。ではその適切な治療とは何でしょうか?

ステージ3までの前立腺癌に対する根治療法として手術と放射線治療がありますが、それぞれ治療成績や副作用が異なり、また特に放射線治療についてはさらにいくつかの方法があります。前立腺癌の診断を受けた患者さんとそのご家族は、不安を感じながらも、医師からいくつかの選択肢を提示された後に治療方針の選択をしなければなりません。

東京医療センター泌尿器科では、前立腺癌の治療として手術が中心であった時期より放射線治療の重要性を認識しており、1997年より前立腺癌への組織内照射治療を開始し、2003年からは現在のI-125を使用した小線源治療を本邦で最初に導入しました。外部照射についても、IMRTに加え、現在は定位照射も実施しています。手術については2013年からはダヴィンチによるロボット支援手術も実施しています。

幅広い治療選択肢を患者さんに提示できることが当院の特徴のひとつと考えています。前立腺癌と診断された患者さんの治療選択の一助となれば幸いと考えています。

新しい低侵襲手術

腎盂がん/尿管がん:ロボット支援腹腔鏡下腎尿管悪性腫瘍手術

腎盂がん/尿管がんは、腎臓で生成された尿を貯める場所である腎盂、あるいは膀胱まで運ぶ管である尿管に出来るがんです。抗がん剤、免疫療法の効果は期待できるものの、転移が無い場合の治療の第一の選択肢は手術となります。腎盂と尿管、そして膀胱は一続きの「尿路上皮」という上皮で覆われているため、例えば腎盂にがんが出来た場合には尿管にもがんが出来やすく、このため手術の際にはがんが出来た側の腎・尿管・尿管の膀胱への流入部までを一塊にして取る事が必要となります。

従来は開腹手術、あるいは腎臓を腹腔鏡下手術にて摘除し、下腹部を別で切開して尿管摘除・膀胱部分切除を行っておりましたが、ロボット支援下にこの手術を行うことで、開腹することなく高精度かつ傷の小さい手術が実現可能となりました。2022年4月よりこの術式は保険適応となり、当院でも2022年7月より同術式を行っております。

腎盂尿管移行部狭窄:ロボット支援腹腔鏡下腎盂形成術

腎盂尿管移行部狭窄は、腎臓から尿管へと尿が流れ出る部位が狭いために、腎臓が腫れて背中の痛みなどの症状を起こす病気です。長期間放置すると腎臓の機能を低下させてしまうことがあります。

治療では狭い部位を切除して尿が抵抗なく流れるようにつなぎ直す手術を行います。従来は開腹にて施行していましたが、ロボット支援下にこの手術を行うことで、高精度かつ低侵襲の手術が実現可能となりました。2020年4月よりこの術式は保険適応となり、当院でも手術を行っております。

膀胱がん:ロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘除術

浸潤性膀胱がんに対するロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘除術を行っています。500例を超えるロボット支援前立腺全摘手術の経験を活かし、より負担が少なくなるように術式を工夫して手術を行っています。従来の開腹手術と比較して下記の利点があります。

  • 手術中の出血量が少ない。
  • 体外に腸管が露出する時間が短くなることで、腸閉塞などの術後合併症のリスクが減少する。
  • 傷が小さくなり、術後の疼痛が少ない。

膀胱摘出後の尿路変向方法には、尿管皮膚瘻造設術、回腸導管造設術、新膀胱造設術等があり、開腹せずに手術を完結する術式も採用しています(手術の既往等、患者さんの状況によります。)。

副腎腫瘍、尿膜管膿瘍:単孔式手術等

副腎腫瘍、尿膜管膿瘍に対しては、腫瘍の大きさ等を検討したうえで、ひとつの傷で行う単孔式腹腔鏡下手術(Laparoendoscopic single-site surgery:LESS)や術創の数を減らしたreduced port surgery(RPS)を積極的に行っています。従来の腹腔鏡手術より整容性も高く、社会復帰も早くなります。

対象疾患

悪性疾患では、前立腺がん、腎がん、尿路上皮がん(腎盂がん、尿管がん、膀胱がん)、精巣がん等に対し、手術、放射線治療、化学療法、免疫療法など個々の病状、年齢や家庭環境、患者様ご本人の希望に沿った治療方針で取り組んでいます。

前立腺肥大症、尿路結石、副腎腫瘍、また女性の骨盤内臓器脱や尿失禁などの良性疾患にも積極的に取り組んでいます。

当科では先天奇形、男性不妊、腎移植の診療は行っておりません。

泌尿器科の主な疾患と治療について

前立腺肥大症

当院で行う治療法は主に内服治療と手術の2つです。

内服治療

主に処方されている薬剤の主な作用機序は、前立腺自体を縮小するというよりも、前立腺肥大症によって機能的に緊張が高まり狭くなった尿道を緩めるということです。1週間程度で効果が見られます。比較的副作用の少ない薬剤ですが、立ち上がったときにめまい(起立性低血圧)が時にみられることがあります。前立腺肥大症が進行し物理的に尿道が狭くなった場合には、効果が低下することがあります。これらの作用をもつ薬剤として、ハルナール、フリバス、ユリーフなどがあります。血流を改善することで排尿症状を軽減させる薬剤としてザルティアも使用されます。

前立腺を縮小させる内服薬を併用することがあります。PSA値を低下させ前立腺癌の発見を遅らせる原因にもなるので、処方前には癌の有無を調べる必要があります。これらの作用をもつ薬剤として、アボルブ、プロスタールなどがあります。 症状の緩和目的に漢方薬の合剤を処方することがあります。副作用はほとんどありませんが、自覚症状の改善はゆっくりです。これらの作用をもつ薬剤として、エビプロスタット、セルニルトンなどがあります。

直接的に前立腺肥大症に作用しませんが、前立腺肥大症に伴う頻尿などについては、膀胱の機能をコントロールする薬剤を併用することがあります。

手術

TUR-P

手術として、前立腺の肥大部分を内側から削ぎ落とすように切除する経尿道的前立腺切除術(TUR-P)という方法を行っています。前立腺をみかんに例えるとみかんの房(中身)だけを内側から削りとり、皮は残すという手術です。

TUEB

比較的大きな前立腺肥大症に対しては、TUR-Pによる出血を軽減のため前立腺をくり抜く(核出する)経尿道的前立腺核出術(TUEB)という方法を行います。

尿路結石

尿路結石について

通常、結石は腎臓で成長し、尿管へ下降した時に激しい痛み(疝痛発作)が生じます。5mm程度くらいまでの結石であれば通常は自然に膀胱内に落ちて、尿道からでてきます。それぞれの部分にある結石を、腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石といいます。

尿路結石による疼痛は結石が尿管の痙攣を起こすことにより一時的に腎臓がはれることで生じると考えられています。したがって、疼痛が強い時は鎮痛剤などの使用により疼痛の軽減をはかることが必要です。尿管の痙攣がとれれば自然に排石することも期待できます。痛みのない尿管結石もありますが長期に放置しておくと気づかないうちに腎臓の機能が低下することもあり適当な時期に治療をすることが必要です。

TUL(※)適応となる尿路結石症について

腎結石と尿管の上部にある結石の治療法として、従来は体外衝撃波砕石術(ESWL)が第一選択となっていました。 しかし、近年の尿管鏡およびレーザー破砕機の性能が向上したことより、ESWLと同等以上の治療効果がTULで得られるようになってきました。 このことから、当院では尿路結石治療において、「より安全で、より確実な治療」を目標として、内視鏡手術を中心とした治療を行っております。

※TUL・・尿路結石に対する内視鏡手術(経尿道的尿路結石除去術)

TULの治療方法

手術は腰椎麻酔または全身麻酔にて行います。 内視鏡を結石の位置まで進めて、モニターで結石を確認しながら、特殊な砕石装置(主にレーザー)を用いて結石を破砕します。 小さめの結石であればそのまま取り出すことも可能ですが、通常はいくつかに砕いてから取り出します。砂状に砕石された結石については取り出すのが困難であり、 自然に流れ出るのを待ちます。

一連の操作により尿管に傷がつき、その部分が一時的にむくむことで腎盂腎炎などを生じるおそれがあるため、 腎臓と膀胱との間に細いチューブ(ステント)を留置します。また、最後に膀胱に管(尿道カテーテル)を留置して手術を終了します。 ステントは外来で抜去します。

腎結石について

TULでの治療が困難と考えられる20mm以上の腎結石などについては、背中から腎臓に直接内視鏡を入れて破砕を行う経皮的腎砕石術(PNL)を施行することがあります。

膀胱がん

膀胱がんとは?

膀胱腫瘍とは、膀胱にできる“おでき”の総称ですが、それらは良性と悪性とに分類され、ほとんどが悪性腫瘍(膀胱がん)です。 膀胱がんは、さらに表在性(筋層非浸潤性: Tis~T1)膀胱がんと浸潤性(筋層浸潤性:T2以上)膀胱がんとに分類されます。

表在性膀胱がんは癌の深さが浅く膀胱以外に病変が広がっていることは少ないとされていますが、浸潤性膀胱がんは癌が深く進む傾向にあり、 膀胱の外に病変が広がり、リンパ腺や他の臓器に転移を生じることがあります。

しかし、膀胱がんの約8割が表在性膀胱がんとされ、ほとんどが表在性膀胱がんです。 つまり、膀胱がんのほとんどが悪性(=がん)であるものの、膀胱内にとどまることが多いということですから、「がん」といわれてもいたずらに心配する必要はありません。

膀胱がんの初期治療(経尿道的膀胱腫瘍切除術;TUR-BT)

膀胱がんに対しては、入院の上、内視鏡による治療が行われます。 腫瘍を削りとるように切除を行います。表在性膀胱がんを完全に切除することのできる深さで切除を行います。 切除した検体は組織検査に提出します。また同時に腫瘍のない正常部分からもいくつか組織検体を採取し、小さな膀胱がんがないか検査に出すこともあります。

手術は主に腰椎麻酔下にて行われますので、痛みはありません。術後は3日間ほど尿道チューブの留置が必要です。

1時間程度の手術です。合併症はあまりありませんが、 考えられるものとしては、出血(術後出血)、尿路感染(腎盂腎炎)、膀胱穿孔などがあげられます。 また、手術には直接関連はありませんが、麻酔と手術というストレスがかかる下では、 予期しない合併症(心筋梗塞、脳卒中、肺塞栓など)が生じる可能性は否定できません。 1回目の手術で充分な深さまで切除できなかった場合や顕微鏡結果によっては、 より確実な診断や治療目的にて術後比較的早期に2回目の切除(セカンドTUR)を施行することがあります。

膀胱がんの治療

a) 表在性膀胱がんの治療

表在性膀胱がんは内視鏡手術により軽快すると考えられています。ただし、4割前後に膀胱内再発を生じる可能性があります。 通常は、再発をしても表在性膀胱がんであることが多く、再び内視鏡手術を施行します。 何回も再発を繰り返す患者さんもいますが、表在性である限りは内視鏡手術を何回でも施行します。 おそらく膀胱を全部切除すれば再発はないでしょうが、膀胱を残すためには仕方がありません。

再発予防としては確実な方法はありませんが、抗がん剤(またはBCG)を膀胱内に注入する治療を行うことがあります。 定期的に外来にて膀胱内に抗がん剤を注入し、一定時間経過後に排尿することで抗がん剤を排泄します。 比較的簡単で痛みも軽度です。抗がん剤を点滴でするわけではないので、全身症状(吐き気、脱毛など)の症状は一切ありません。

b) 浸潤性膀胱がんの治療

“根”の深い浸潤性膀胱がんはTUR-BTにより治ることはありません。 手術により膀胱を全部摘出するか、放射線をかけるか、あるいはそれらの治療と抗がん剤を組み合わせるなどの治療が必要となります。 当院での膀胱全摘術はロボット支援にて施行しています。

c) 上皮内がんの治療

上皮内がんは腫瘍の“根”は浅いのですが、異型度(悪性度)が高いことが多く、治療と共に厳重な経過観察が必要です。 治療については、従来結核の治療薬に用いられてきたBCGという薬剤を膀胱内に注入する方法がとられます。 6~8週間にかけて、毎週1回、外来にて膀胱内にBCGを注入し、約2時間経過後に排尿するだけの比較的簡単な治療ですが、 しばしば膀胱刺激症状(排尿痛や頻尿)が強く出現し、まれに発熱することもあります。

一方、浸潤性膀胱がんに進行することがあることを重視して、状態によってはこの時点で膀胱を全部摘出することをお勧めすることもあります。

腎がん

腎がんの病期診断

腎がんの治療は腫瘍の広がり(病期)によって異なります。下図に示すように腎臓で大きな腫瘤を呈したり、リンパ節や血流にのって肺などに転移することがあります。

腎がんの病期診断

転移のない腎がんの治療

がんが腎臓の外に転移していなければ、手術で根治が期待できます。 腫瘍が小さい場合(4cm未満)には、腫瘍部分と隣接する正常組織だけを取り除き、腎臓の残りの部分は残す(腎部分切除術)こともあります。 ただし、腫瘍の位置によっては部分切除ができないこともあります。 腫瘍が4cmを超えると腎臓全体を取り除かなければならない(根治的腎摘除術)場合もあります。 当院では、腎部分切除術はロボット支援腎部分切除術、根治的腎摘除術は腹腔鏡下腎摘除術を主に行っています。
転移のない腎がんの治療

転移のある、または手術のできない腎がんの治療

腎がんの遠隔転移は肺に多くみられますが、腎がんの診断時だけでなく、発見された腎がんをすべて外科手術で取り除いた数年後に転移が明らかになることもあります。 腎がんは抗がん剤・放射線が効きにくく、以前、最も効果があるとされていたサイトカイン療法(インターフェロン・インターロイキン2)でも、15~20%程度の有効率といわれていましたが、 現在では数種類の分子標的薬治療や免疫チェックポイント阻害剤が使用されるようになり、治療効果が向上しています。 「腎癌診療ガイドライン」において2019年5月に改訂された進行腎癌に対する薬物療法の選択基準では下記のように提案されています。

腹圧性尿失禁と骨盤臓器脱(膀胱瘤、子宮脱、直腸瘤)

女性の骨盤底が分娩や加齢、閉経によるホルモンバランスの変化により弱くなることにより腹圧性尿失禁や骨盤臓器脱が生じます。当科では投薬や骨盤底筋運動などの保存的治療で改善しない腹圧性尿失禁や骨盤臓器脱に対してポリプロピレンメッシュを用いた手術を行なっています。

1) 腹圧性尿失禁に対する手術

経閉鎖孔式テープ(TOT)とTVT (tension-free vaginal Tape)手術

腟前壁に2cmほどの切開を加え膀胱頸部周囲を剥離してポリプロピレンメッシュのテープを閉鎖孔(TOT)もしくは恥骨上(TVT)に引き出す手術です。 治療効果と合併症のバランスを考慮してTOTを第一選択にしています。

2) 骨盤臓器脱に対する手術

Tension-free vaginal mesh (TVM手術)

膀胱や直腸が膣に飛び出すヘルニア状態を膀胱瘤や直腸瘤と呼びます。

Tension-free vaginal mesh (TVM手術)

TVM手術は膀胱や直腸が飛び出す穴をポリプロピレンのメッシュで塞ぐ手術です。 また、子宮口をメッシュに縫い付ける事により子宮脱も治します。 このメッシュを固定するテープ引き出すために足の付け根に6-8箇所の小さな切開を加えます。 このため手術直後は座ると痛むことがあります。他に術後に見られる合併症としては一過性の排尿障害、子宮脱再発(3%)、メッシュの露出(5%)です。 米国のFDAから経膣メッシュ手術に対する警告が出されておりますが、日本での実績は良好であり、これまで当院でのTVM手術でも大きな合併症が生じたことはありません。 手術前まで控えていた外出や運動を術後は気にせずできるようになり、生活の質が改善することが期待できます。

前立腺がん

東京医療センターでは、小線源療法、前立腺全摘術(ロボット支援)、外部照射療法(IMRT、定位照射)、 ホルモン療法、化学療法等、広い範囲での治療選択が可能となっています。 そのため当院は前立腺癌患者さんの数において、全国でも有数の施設となっています。

小線源療法

本邦最多の治療経験より

東京医療センターでは、2003年に国内初のヨウ素125シード線源永久挿入による小線源療法を実施し、 その後の19年間に4300例を越す症例の経験を通じて、重篤な合併症はみられず、この治療の高い有効性と安全性を確認しています。

治療は通常4日間の入院で終了し、前立腺癌のほかの治療に比べて短期間で済みます。 治療後に尿が出にくくなったり、尿が近くなったりなどの症状は一時的にみられることがありますが、 日常生活を大きく害することは通常ありません。

また、この治療では性機能の温存率が高く、 国内外の報告では治療後に機能が保たれる割合は60~70%とされていて、 前立腺癌治療の中においては良好なものとされています。

このようにシード線源を用いた小線源療法は、治療に要する時間が短く、 合併症も少なく、生活の質もよく維持され、そして治療効果も高い治療法であり、 日本でも早期前立腺がん治療のひとつとして確立したものとなっています。

これまでに国内100以上の施設でこの治療が実施され、 2021年末には50,000例を越す治療がなされています。

小線源治療については下記リンクにてご覧ください

当院における治療成績

小線源療法が開始された当初は、 遠隔転移およびリンパ節転移のない低リスクまたは中間リスク群のみが治療対象と考えられていましたが、 長期のデータでは高リスク群においてもホルモン療法を併用することで良好な成績が得られており、 現在ではそのような患者さんにも治療を行っています。

当院でのリスク分類は下記のとおりです。 この分類は小線源治療方針を決めるためのものであり、他のリスク分類とは異なります。 小線源治療は手術と異なり、治療後の病理検査ができません。 そのため適切な治療方針を決める際にはMRI画像検査を重視します。 そのため、他施設とは異なる治療方針を提示させていただくことがあります。

以下に当院で小線源療法を実施した症例のリスク別の長期成績を示します。

ロボット支援手術

精度の高い手術を目指して、手術支援ロボットdaVinciの導入

2012年4月から前立腺がんに対するロボット支援下根治的前立腺全摘除術(RARP)が保険適応になりました。 現在日本では300台以上の手術ロボット(daVinci;ダ・ヴィンチ)がすでに導入されています。 米国では前立腺がんの手術の95%以上がRARPで行われています。 当院でも2013年10月にダ・ヴィンチを導入し、手術件数も年間100例程度施行しています。

ダ・ヴィンチでの前立腺手術が可能になったことで、当院での手術が一段と飛躍したことは勿論として、 小線源治療に加えて患者様の治療の選択肢が拡がることになりました。 ロボット手術の長所としては、傷が小さいため社会復帰が早い、術中の出血量が極めて少ない、 術後の尿失禁の回復が早い、勃起能の温存率が高いなどが挙げられます。

ロボット支援内視鏡手術に関して

診療実績

手術名   2019年 2020年 2021年 2022年 2023年
副腎摘除術 鏡視下 5 5 3 3 0
経皮的腎・尿管砕石術(PNL)   3 2 4 1 4
体外衝撃波砕石術(ESWL)   28 20 35 32 15
根治的腎摘除術 開腹 2 1 3 2 0
鏡視下 6 8 7 14 5
ロボット支援下 0 0 0 0 2
腎部分切除術 開腹 1 0 0 0 0
ロボット支援下 22 16 18 16 18
腎尿管全摘膀胱部分切除術 開腹 4 4 0 1 0
鏡視下 8 11 11 11 5
ロボット支援下 0 0 0 10 9
腎盂形成術 ロボット支援下 0 3 7 3 2
経尿道的尿管砕石術(TUL)   24 43 65 52 60
膀胱全摘除術 開腹 8 2 0 0 1
ロボット支援下 3 14 7 11 8
(回腸導管造設術) 9 14 8 10 8
(新膀胱造設術) 2 2 0 1 1
経尿道的膀胱腫瘍切除術   167 137 141 155 135
尿失禁手術(TVT、TOT)   5 4 7 5 8
精巣摘出術(非悪性疾患)   0 3 3 2 3
高位精巣摘出術   7 6 3 10 8
精巣固定術(精巣捻転に対する)   0 4 7 2 2
前立腺肥大症手術 TUR-P・TUEB 18 36 20 11 19
CVP 3 1 5 16 13
根治的前立腺全摘除術 ロボット支援下 93 65 86 100 111
小線源療法(ヨウ素125)   261 305 202 190 151

スタッフ紹介

 門間 哲雄
氏名
門間 哲雄 (もんま てつお)
職名
科長
卒業年
1988年
出身大学
慶應義塾大学卒
資格
日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本癌治療学会がん治療認定医、第1種放射線取扱主任者
専門分野
泌尿器科領域疾患一般、泌尿器科腫瘍、前立腺癌小線源治療
西山 徹
氏名
西山 徹 (にしやま とおる)
職名
医長
卒業年
1991年
出身大学
慶應義塾大学卒
資格
日本泌尿器科学会専門医・指導医
専門分野
泌尿器科領域癌治療、神経因性膀胱、尿失禁、女性骨盤手術
矢木 康人
氏名
矢木 康人 (やぎ やすと)
職名
医員
卒業年
2002年
出身大学
藤田保健衛生大学卒
資格
日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本癌治療学会がん治療認定医、日本ロボット外科学会国内A級認定医、ロボット支援手術プロクター認定医(手術指導医)
専門分野
泌尿器科領域癌治療、ロボット支援手術、尿路結石治療、小線源療法
服部 盛也
氏名
服部 盛也 (はっとり せいや)
職名
医員
卒業年
2005年
出身大学
慶應義塾大学卒
資格
日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本癌治療学会がん治療認定医、日本ロボット外科学会国内A級認定医、泌尿器腹腔鏡技術認定医、ロボット支援手術プロクター認定医(手術指導医)、日本内視鏡外科学会技術認定医(泌尿器腹腔鏡)、 臨床研修指導医、博士(医学)
専門分野
泌尿器科領域癌治療、ロボット支援手術
中村 憲
氏名
中村 憲 (なかむら けん)
職名
医員
卒業年
2009年
出身大学
北里大学卒
資格
日本泌尿器科学会専門医・指導医、手術支援ロボットダビンチ資格認定、日本ロボット外科学会国内B級認定医
専門分野
泌尿器科領域疾患一般、小線源療法
金子 雄太
氏名
金子 雄太 (かねこ ゆうた)
職名
医員
卒業年
2015年
出身大学
慶応義塾大学卒
資格
日本泌尿器科学会専門医
専門分野
泌尿器科領域一般、尿路結石
野原 素直
氏名
野原 素直 (のはら すなお)
職名
レジデント
卒業年
2018年
出身大学
筑波大学卒
井上 三保子
氏名
井上 三保子 (いのうえ みほこ)
職名
レジデント
卒業年
2019年
出身大学
熊本大学卒
中西 洋介
氏名
中西 洋介 (なかにし ようすけ)
職名
レジデント
卒業年
2021年
出身大学
岐阜大学卒
三浦 数馬
氏名
三浦 数馬 (みうら かずま)
職名
レジデント
卒業年
2021年
出身大学
福岡大学卒
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