核医学検査
核医学検査って?
放射線の種類の一つであるγ(ガンマ)線を放出する少量のお薬(放射性医薬品)を静脈から注射し、検査用のベッドの上で静かに横になっている間に、専用のカメラ(ガンマカメラ)で体の中の様子を画像にする検査です。病院によっては、ラジオアイソトープ検査や、その頭文字をとったRI検査、または核医学検査と呼ばれています。検査する体の部位によって色々な名称がありますが、核医学検査の基本的な内容は一緒です。
核医学検査では、体に投与されたお薬が骨や脳、心臓等といった臓器に特異的に集まり、そのお薬から微量の放射線を放出します。その放射線を信号として専用のカメラで検出し、画像として写し出すものです。それにより、臓器の形状や、その臓器の機能などがわかります。
東京医療センターでは、シンチ検査とPET-CT検査を行っています。
どんなことをするの?
ほとんどの場合、検査用のベッドに20~30分静かに横になっている間に検査は終わってしまいます。そのため患者さんにとっても、大変苦痛の少ない検査法です。ただ使用するお薬の量により、検査に時間がかかってしまうことや、お薬によって臓器に集まる時間がそれぞれ違うために、注射後すぐに検査が出来る臓器と、時間をおいてからでないと行うことができない臓器があるために、少し時間をお待ちいただく場合があります。
代表的な核医学検査
骨シンチグラフィについて
この検査に用いられるお薬は、99mTc(テクネチウム)というアイソトープをリン酸化合物に標識し、骨の代謝や反応が盛んなところに集まる特徴があります。この性質を利用して、骨腫瘍や骨の炎症、骨折の診断ができます。骨の核医学検査は、乳がん、肺がん、前立腺がんなど各種のがんの治療前や治療後の経過をみる上で欠かせません。X線検査よりも早期に、しかも患者さんの苦痛も少なく骨の異常を見つけられます。またX線検査では診断が困難なスポーツ選手の疲労骨折や、骨粗しょう症に伴う骨折の診断でも、骨シンチは鋭敏に検出することができます。
以下の疾患の診断に有効です。
- 悪性腫瘍の骨転移診断
- 骨折の部位診断
- 原発性骨腫瘍の診断
- 感染(骨髄炎など)の診断
原理:骨シンチグラフィは、骨の代謝情報を画像化して調べる検査です。骨組織を構成する無機質の主成分であるハイドロキシアパタイトにリン酸化合物に標識した放射性医薬品が化学吸着します。骨疾患の多くは無機質の代謝が亢進するため、お薬はより多くハイドロキシアパタイトに集積するため、骨病変を検出することができます。X線単純写真では捉え難い骨代謝の異常や病変でも、骨シンチは鋭敏に検出することができます。
手順:放射性医薬品を静脈注射し、約3~4時間後に骨に十分薬が集まってから撮像します。通常は午前に注射して、午後から骨の画像をとることが多いです。この検査は食事とは関係ありませんので、朝食や昼食は普通に摂っていただいてかまいません。また、待ち時間の間は検査室の外に行かれても差し支えありません。撮像はベッドがゆっくり動いて、全身の画像を前面からと背面からの2方向を同時に行います。特定部位のみの撮影や断層像が得られるSPECT撮像を行う場合もあります。検査時間は15分程度です。きれいな画像をとるために、検査をしている間は動かないようにしてください。
前処置:投与された放射性医薬品は徐々に尿と一緒に膀胱に溜まり、骨と膀胱が重なってしまいます。そのため検査直前の排尿が必要です。また、検査後は水分を多めに摂取してください。
心筋シンチグラフィ
心臓の核医学検査には、心筋血流状態を画像化する心筋血流シンチ、交感神経の働きを画像化する心筋交感神経機能シンチ、脂肪酸代謝を画像化する心筋脂肪酸代謝シンチなどがあります。最もよく行われている検査は、心筋の血流をみる心筋血流シンチグラフィです。ここでは主に心筋シンチについて説明いたします。
心臓は筋肉の塊で、体全体に血液を送り出すポンプです。常に働き続けているため、たくさんの栄養や酸素が必要です。この酸素や栄養は、冠動脈と呼ばれる3本の血管を流れる血液によって運ばれます。狭心症や心筋梗塞は、この冠動脈が動脈硬化などで狭くなったり、血液が流れにくくなっていたりするため起こります。治療は細い管のカテーテルで血管の狭くなったところを拡げたり、別の血管をつなぐバイパス手術を行ったりして、心筋細胞に血液が十分運ばれるようにします。治療の前に知っておかなければならないことは、血液の流れが足りない心筋の場所がどこか、そこの心筋細胞は生きていて、治療で治る見込みがあるかどうかです。この目的に心筋シンチグラフィが大変役立ちます。また血管造影検査と比べて患者さんの負担が小さいので、腎機能が低下している患者さんや治療した後の経過を見るためにもよく利用されます。
原理:201Tl-Cl(塩化タリウム)はNa-K活性を介して能動輸送により心筋組織に取り込まれます。99mTc製剤は受動拡散によって心筋組織に取り込まれます。いずれも心筋への取り込みは冠血流に比例します。負荷試験を行うことで、心筋虚血の有無、あるいは病変部が梗塞か虚血かの鑑別診断に有用です。
手順:安静試験と負荷試験の2通りがあります。安静の場合、201Tlを静脈に注射した後、安静にして15分後に検査します。撮影後、3~4時間後にもまた検査します。 血管の詰まり具合の程度が軽い例では、安静な状態で検査しても、どの部分に病気があるか判りません。そこで、患者さんの心臓に負荷をかけることにより、病気の部分と正常の部分の区別ができるようになります。負荷試験の場合、薬剤(血管拡張剤:ジピリダモール)を用いて心臓に負荷をかけます。負荷試験は循環器内科医師が行います。負荷試験の最中に、放射性医薬品を静脈注射します。負荷終了後、心筋血流分布の状態をSPECT撮像で行います。3~4時間後には安静時の心筋血流分布を得るために2回目のSPECT撮像を行います。検査時間はそれぞれ15~20分程度です。
前処置:当院において、全ての心筋シンチグラフィの検査では、心臓の診断精度を上げるために、朝食が食べられません。また検査の内容によって、使用するお薬の効果を弱くさせる恐れがあるため、検査前にコーヒーやお茶などカフェインが入っているものは召し上がれない場合があります。
この方法の他に123I(ヨウ素)を使って心筋の脂肪酸代謝や、交感神経の分布の異常をみるシンチグラフィも行っています。
脳血流シンチグラフィ
CT検査は脳内の形の変化を見て、病気があるかどうかを調べるものです。MRI検査は装置によっては機能をみることもできますが、通常はCTと同様に脳内の形の変化を見ています。核医学検査では形の異常ではなく、もっぱら機能の異常を調べるために行われます。脳の病気では形の異常があらわれる前に、機能の異常があらわれることがあります。核医学検査は、病気の早期の診断や回復の可能性がある障害の軽い場所を見つけるために役立ちます。現在、最も多くおこなわれている脳の核医学検査は、脳血流シンチといわれる血流を調べる検査であります。脳血流シンチは、脳の生理的、機能的情報を得る手段として臨床に広く用いられており、脳血管障害における障害領域の診断や変性疾患における脳機能低下による局在診断まで幅広い範囲で診断に利用されます。
東京医療センターでは、99mTc-ECDと123I-IMPによる脳血流シンチが主に行われています。
以下の疾患の診断に有効です。
- 脳梗塞、一過性脳虚血発作、片頭痛、脳炎、認知症、てんかん、脳腫瘍等
また脳循環予備能を調べる負荷試験を行うことで、虚血性脳血管障害の予後の評価、脳血行再建術の適応決定や治療効果の評価などに有用です。
原理:99mTc-ECDは静脈注射後、容易に脳血液関門を通過して脳実質に摂取されます。そして脳内のエステラーゼにより加水分解されて、水溶性化合物に変わり、血液脳関門通過性を失い、脳実質に保持されます。
手順:脳の血流を調べるために、脳血流シンチグラフィではSPECTを撮ります。当院では脳血流SPECTを行う前に、脳血流定量測定(パトラックプロット法)を行います。薬を一定の速度で右の腕の静脈から投与しながら撮影いたします。薬を投与終了後、SPECT撮影を行います。検査時間は30~40分間です。脳内の血流を調べるときは、血流の多いところに多く、少ないところには少なく集まるお薬を使います。そして薬の集まり具合を、断層画像として表します。負荷試験の場合は、脳血管拡張剤(ダイアモックス)を薬の投与10分前に投与いたします。以後の検査手順は安静時と同じです。
前処置:特にありません
定量解析:定量解析法により、局所の脳血流量を算出することができます。また負荷試験と安静時の比較をすることで、脳循環予備能(血管反応性)の画像化と共に、局所血流の差分量と変化率の算出が可能です。そのほかに、統計学的脳機能解析(3D-SRT、eZIS)を行います。この解析方法を用いることで、認知症の診断などにおいて、客観的な診断能の向上、微細変化検出能の向上、3次元的な病変の広がりの把握に役立ちます。
他にも以下の検査を行っています。詳細な検査内容、疑問などをお持ちの患者様は、お気軽にお尋ね下さい。
- 脳イオフルパン(ダットスキャン®)シンチ
- 唾液腺シンチ
- 甲状腺シンチ
- 甲状腺摂取率
- 副甲状腺シンチ
- 肺血流シンチ
- 肝シンチ
- 肝機能シンチ
- 肝胆道シンチ
- 腎シンチ
- 腎機能シンチ
- 副腎皮質シンチ
- 副腎髄質シンチ
- リンパ管シンチ
- センチネルリンパ節シンチ