冠動脈カテーテル検査・治療

冠動脈疾患について

不安定狭心症、急性心筋梗塞

不安定狭心症とは、労作性狭心症が新たに生じた場合、狭心症症状の出現頻度が増え、持続時間が長くなった場合、安静時に狭心症症状が出現した場合で、急性心筋梗塞へ移行する危険性の高い状態です。
急性心筋梗塞は急性に冠動脈の閉塞・高度狭窄のために心筋への血流が極度に不足して、心筋細胞が死に至る状態です。心機能の低下(心不全)、心破裂、致死性不整脈による生命の危険を生じます。急性心筋梗塞は一度発症すると死亡率は約30%と高率であり多くは病院受診前の死亡になります。一方で病院受診後に適切な治療を受けると死亡率は約5-7%であり、早期受診→緊急心臓カテーテル検査によって診断し、一刻も早い治療が必要です。
当院循環器内科は東京都CCUネットワークに加入しており24時間365日で緊急症例の受け入れを積極的に行い、急性心筋梗塞に対するカテーテル加療を行なっており、東京23区内でもトップレベルの症例数を経験しております。

安定狭心症

冠動脈の狭窄のために、労作時に心筋への血流不足を生じ、胸痛や心電図変化が出現する病態です。
検査の方法は運動負荷試験、心筋シンチ、心臓CTなどがあり、治療方法としては薬物療法、経皮的冠動脈形成術(PCI)、冠動脈バイパス術(CABG)がありそれぞれにメリット、デメリットがあります。当院では患者さん、ご家族の希望や全身状態から心臓外科とのハートチームカンファレンスを定期的に行い患者さんにとって一番良い方法を模索することを心掛けております。

検査について

心臓CT、FFR-CT

心臓CT検査で冠動脈に狭窄が見つかった場合、その狭窄が症状の原因となっているのか?心臓の働きにどの程度影響を与えているのか?を判断する必要があります。中等度狭窄の場合など心臓CT検査の結果からの判断は時に難しく、従来は、心臓核医学検査や心臓カテーテル検査を行っていました。
FFRCTでは、冠動脈CT検査のデータをもとに最新のコンピュータ技術で解析を行い、冠血流予備能(FFR)を数値と色で示すことで、冠動脈狭窄による血流の低下がどの程度であるかを判定します。このような情報は、これまでは心臓カテーテル検査でしか得られなかったものです。
この方法により不要な検査入院や不必要な治療が減ることが知られており患者さんの負担を減らすことができます。FFRCTを実施するには施設基準が設けられており、この基準を満たしている施設のみが検査を行うことが可能で当院ではこの基準を満たしており積極的に活用して検査、治療適応についても評価しております。(FFR-CTには心臓CTとは別途費用がかかります)

(提供:ハートフロー ジャパン社)
(提供:ハートフロー ジャパン社)

心臓カテーテル検査(CAG)

カテーテルを用いて行う心臓の検査を心臓カテーテル検査と総称し、心臓の筋肉に血液を供給する血管(冠動脈)の状態を調べる冠動脈造影、心臓のポンプ機能の中心である左室の機能をみる左室造影、心臓から送り出される血液量や心臓内の圧を計測する右心カテーテル検査、不整脈の原因を調べる電気生理学的検査などがあります。冠動脈に狭窄や閉塞が疑われる狭心症や心筋梗塞の患者さんでは冠動脈造影と左室造影を通常行います。

心臓カテーテル検査では局所麻酔して手首や大腿の付け根(鼠径部)から直径数ミリのカテーテルを心臓まで挿入します。冠動脈に造影剤を注入して冠動脈の写真を撮り、狭心症や心筋梗塞といった冠動脈疾患の確定診断を行うともに、PCIやバイパス術の適応といった治療方針の決定に不可欠の検査です。しかし危険性がゼロでない侵襲的検査であり、重篤な合併症(血管損傷や塞栓症など)が発生する確率は0.2~0.3%とされます。当院ではCAG入院の際は2泊3日で対応しております。

治療について

経皮的冠動脈形成術(PCI)

PCIは冠動脈の狭窄・閉塞部位をカテーテルの先端に付いた風船やステントで押し広げて、物理的に血流の改善を図る方法です。通常は風船をしぼませて体外に抜き、その部位に薬剤溶出性ステント(DES)を留置することが多いですが、状況に応じては薬剤溶出性バルーン(DCB)で治療することもあります。

当院ではPCI入院は安全性を第一として、3泊4日で対応しております。可能な範囲で手首からの治療を行なって低侵襲での治療を心掛けております。

冠動脈バイパス術(CABG)

心臓血管外科の項目をご参照ください。

治療デバイスについて

IMPELLA補助循環用ポンプカテーテル

インペラ(IMPELLA)とは、左心室負荷を直接軽減する補助人工心臓の一つです。2017年9月から日本にも導入され、当院でも施設基準を満たしており必要な症例には積極的に活用しております。「補助循環」というのは、心臓のポンプ機能を助ける働きを意味しています。その補助により、破綻した心臓機能を代行します。循環を補助する装置はインペラの他にも大動脈バルーンパンピング(IABP)、経皮的心肺補助装置(PCPS)、左室補助人工心臓(LVAD)があります。インペラ補助循環用ポンプカテーテルは小型モーターを内蔵したポンプカテーテルを心臓の左心室に挿入する新しい左室補助循環装置です。特徴は、経皮的/経血管的にポンプカテーテルを挿入し、ポンプ内のインペラ(羽根車)を高速回転することで左室内に挿入したポンプカテーテル先端の吸入部から血液を吸引して、上行大動脈に位置した吐出部から血液を送り出すことにより循環を補助します。従来から使用されているIABPよりも補助流量が多く左室負荷をより軽減することができるデバイスです。

インペラには、IMPELLACPとより大きな補助が可能なIMPELLA5.0があります。CPは循環器内科にてカテーテル室で経皮的に挿入しますが、5.0は人工血管を用いて挿入するため心臓血管外科サポートにてアンギオ室で留置を行なっております。

(提供:日本アビオメッド社)

ローターブレーター

ステント技術により再狭窄率は大幅に減少しましたが、高度石灰化病変は現在もなおPCIの成績を低下させる病変の代表です。
ローターブレーターはダイヤモンドの微小チップをコーティングしたラグビーボール状のバーと呼ばれるものを高速回転させ、硬くなりバルーンで広がらない石灰化を削りとる方法です。ローターブレーターを使うことでバルーンによる良好な拡張を得ることができるようになります。ローターブレーターは定められた施設基準を満たす病院のみでの使用が可能な特殊な機械です。当院でも施設基準を満たしており必要な症例には積極的に活用しております。

(提供:ボストン・サイエンテフィックジャパン社)

ダイアモンドバック

ダイアモンドバックも同様に施設基準が定められております。2022年10月から当院でも使用開始しております。カテーテルの先端から数ミリのところに、ダイアモンドでコーティングされたクラウンと呼ばれる部分があり、この部分が高速回転することで石灰化病変を削ることができます。石灰化の病変によってローターブレーターと使い分けたり、組み合わせることでより良い治療ができるように工夫しております。

(提供:メディキット株式会社)

虚血性心疾患担当医師

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