膀胱がん
膀胱がん
膀胱がんとは?
膀胱腫瘍とは、膀胱にできる“おでき”の総称ですが、それらは良性と悪性とに分類され、ほとんどが悪性腫瘍(膀胱がん)です。 膀胱がんは、さらに表在性(筋層非浸潤性: Tis~T1)膀胱がんと浸潤性(筋層浸潤性:T2以上)膀胱がんとに分類されます。
表在性膀胱がんは癌の深さが浅く膀胱以外に病変が広がっていることは少ないとされていますが、浸潤性膀胱がんは癌が深く進む傾向にあり、 膀胱の外に病変が広がり、リンパ腺や他の臓器に転移を生じることがあります。
しかし、膀胱がんの約8割が表在性膀胱がんとされ、ほとんどが表在性膀胱がんです。 つまり、膀胱がんのほとんどが悪性(=がん)であるものの、膀胱内にとどまることが多いということですから、「がん」といわれてもいたずらに心配する必要はありません。
膀胱がんの初期治療(経尿道的膀胱腫瘍切除術;TUR-BT)
膀胱がんに対しては、入院の上、内視鏡による治療が行われます。 腫瘍を削りとるように切除を行います。表在性膀胱がんを完全に切除することのできる深さで切除を行います。 切除した検体は組織検査に提出します。また同時に腫瘍のない正常部分からもいくつか組織検体を採取し、小さな膀胱がんがないか検査に出すこともあります。
手術は主に腰椎麻酔下にて行われますので、痛みはありません。術後は3日間ほど尿道チューブの留置が必要です。
1時間程度の手術です。合併症はあまりありませんが、 考えられるものとしては、出血(術後出血)、尿路感染(腎盂腎炎)、膀胱穿孔などがあげられます。 また、手術には直接関連はありませんが、麻酔と手術というストレスがかかる下では、 予期しない合併症(心筋梗塞、脳卒中、肺塞栓など)が生じる可能性は否定できません。 1回目の手術で充分な深さまで切除できなかった場合や顕微鏡結果によっては、 より確実な診断や治療目的にて術後比較的早期に2回目の切除(セカンドTUR)を施行することがあります。
膀胱がんの治療
a) 表在性膀胱がんの治療
表在性膀胱がんは内視鏡手術により軽快すると考えられています。ただし、4割前後に膀胱内再発を生じる可能性があります。 通常は、再発をしても表在性膀胱がんであることが多く、再び内視鏡手術を施行します。 何回も再発を繰り返す患者さんもいますが、表在性である限りは内視鏡手術を何回でも施行します。 おそらく膀胱を全部切除すれば再発はないでしょうが、膀胱を残すためには仕方がありません。
再発予防としては確実な方法はありませんが、抗がん剤(またはBCG)を膀胱内に注入する治療を行うことがあります。 定期的に外来にて膀胱内に抗がん剤を注入し、一定時間経過後に排尿することで抗がん剤を排泄します。 比較的簡単で痛みも軽度です。抗がん剤を点滴でするわけではないので、全身症状(吐き気、脱毛など)の症状は一切ありません。
b) 浸潤性膀胱がんの治療
“根”の深い浸潤性膀胱がんはTUR-BTにより治ることはありません。 手術により膀胱を全部摘出するか、放射線をかけるか、あるいはそれらの治療と抗がん剤を組み合わせるなどの治療が必要となります。 当院での膀胱全摘術はロボット支援にて施行しています。
c) 上皮内がんの治療
上皮内がんは腫瘍の“根”は浅いのですが、異型度(悪性度)が高いことが多く、治療と共に厳重な経過観察が必要です。 治療については、従来結核の治療薬に用いられてきたBCGという薬剤を膀胱内に注入する方法がとられます。 6~8週間にかけて、毎週1回、外来にて膀胱内にBCGを注入し、約2時間経過後に排尿するだけの比較的簡単な治療ですが、 しばしば膀胱刺激症状(排尿痛や頻尿)が強く出現し、まれに発熱することもあります。
一方、浸潤性膀胱がんに進行することがあることを重視して、状態によってはこの時点で膀胱を全部摘出することをお勧めすることもあります。