【泌尿器科】進化する前立腺がんの検査と治療法
肝心なのは早期発見 50 歳を過ぎたらPSA 検査を
前立腺がんは、男性特有の臓器である前立腺にできるがんです。前立腺は膀胱の出口付近にあるクルミ大の組織で、真ん中を尿道が貫いていて、若い頃には精液を作る重要な役割を果たしています。年齢を経て男性ホルモンに反応して大きくなると、尿道を圧迫して尿が出にくくなったり、排尿の回数が増えるなどの症状が出る「前立腺肥大症」という病気がありますが、前立腺がんとの関連はありません。 前立腺がんの患者数は現在、男性のがんの中で最も多くを占めるものです。一方で早期発見できれば生存率は非常に高く、5年生存率は99.1%という「進行の遅いがん」といえます。その早期発見を容易にしたのが採血による「PSA検査」であり、50歳を過ぎたら一度は受けるべきでしょう。PSAの基準値は一般的には4ng/mL未満ですが、数値のベースラインには個人差があるため、ご自分の基礎値を把握するためにもPSA検査を受けることをおすすめします。PSA値が高値の場合には精密検査を行います。 前立腺がんの精密検査は、主に肛門から特殊な針を刺して組織を採取して調べる生検(経直腸的生検)が行われてきましたが、事前に撮ったMRIで前立腺の腹側に病変が疑われる場合には、会陰部(陰嚢と肛門の間)から針を挿入する経会陰的生検を行うことがあります。また現在注目されるのが、「MRIフュージョン生検」と呼ばれる検査法です。MRI画像と3D超音波検査のデータ、さらにナビゲーションによってがんの位置を正確に把握して行う生検で、診断率がいっそう向上する利点があります。 精密検査(生検)では、前立腺がんの有無の判定だけでなく、その悪性度を判定することができます。悪性度はグリーソンスコア(6~10)で示され、それが高いほど進行の早いがんと考えられます。また、前立腺がんは骨やリンパ節に転移しやすいため、その診断がついた場合にはCTと骨シンチ検査を実施して、病気の広がり(病期)を判定します。これら悪性度や病期などのデータ以外にも年齢や健康状態等を総合的に検討して、最終的に治療方針を決定します。 前立腺がんには、症状のないまま経過してそれが死亡原因にならないものが存在することも明らかになっており、このような場合には、PSA検査や、MRI検査などを行いながら経過観察を行う「監視療法」という方法を実施することもあります。この方針ではすぐに治療は行いませんが、病状が進行する傾向があったり、PSAの数値の変動への不安などの理由があれば、治療を行います。
ロボット支援手術・ダビンチSP(シングルポート)の導入
治療の選択肢が豊富な施設であれば 患者さんに最適な治療ができる
前立腺がんの治療は、がんの根治を目指すと同時に、尿もれや性機能障害といった合併症を少なく抑える治療を行うことが大切です。その点、当科では手術から放射線療法までさまざまな治療が提供可能であり、患者さんが希望する最適な治療を患者さんとの相談のもと選択することができます。 早期がんに有効な、放射線治療の内照射である「小線源療法」(小さな粒状の線源を前立腺内に留置する治療)は国内随一の症例数を実施しており、豊富な経験と実績を有しています。また手術においては、近年主流になっているロボット支援手術 「ダビンチ」 をほぼ100%の割合で実施しています。 このように、小線源療法、前立腺全摘術(ロボット支援手術)、放射線療法、ホルモン療法など治療におけるすべての選択肢があり、必要に応じて併用療法を実施できるのが当科の強みです。患者さんの希望と適応に照らしてあらゆる治療を提供いたします。