【整形外科】変形性股関節症の最新治療
原因の7~8割は先天性の臼蓋形成不全
日本では生まれつき「臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)」といって、太ももの骨の先端(大腿骨頭(だいたいこっとう))の受け皿となる骨盤の骨(臼蓋(きゅうがい))が不完全な方が少なくありません。この状態では、骨と骨が接触する面積が小さいため、負荷が集中して軟骨がすり減りやすくなります。変形性股関節症の患者さんのうち、臼蓋形成不全の方が7~8割を占め、特に女性が多いのが特徴です。そのほかの原因としては、激しいスポーツや体重過多などがあげられます。
近年では、加齢による背骨の変形に伴って骨盤が傾斜し、片側に体重がかかるようになることで股関節がつぶれてくるという症例が増えていると感じます。変形が進行して可動域が狭まっていくと、それを広げることは難しいため、早期のうちに受診していただければと思います。
50 歳以降なら人工股関節は 一生もつ可能性が高い
人工股関節置換術とは、悪くなった股関節の表面を取り除いて骨内に金属製のインプラントを埋め込み、セラミックのボールと人工の軟骨としてのポリエチレンの間でスムーズに動く人工股関節に置き換えるものです。
人工股関節の耐用年数が長くなったことで、以前は65歳以上が対象となっていた手術を、50歳くらいの比較的若い方にもおすすめできるようになりました。現段階で20年、30年前に手術した方でも機種によっては9割以上は入れ替えないで使えていますから、さらに進化した人工関節では、一生もつ可能性が高いといえます。
当科では、2023年に人工股関節置換術を309件行いました。近隣の方はもちろん、北海道から九州まで全国各地から来られる方もおられます。現在は経験が少ない医師でも、正確かつ安全にインプラント設置ができるように手術支援ロボットも導入しています。
ほとんどの症例において、筋肉を切らない方法で手術を行っているため傷口も小さくて済み、術中の出血量を減らす工夫をしているので、自己血貯血(じこけつちょけつ)もドレーン留置も行っておりません。片側の人工股関節置換術を最短28分という短時間で完了していますので、感染・出血などの合併症も低減できます。
また痛みや体の負担が少ないため、術後の早期回復が実現でき、短期で生活の質の向上が見込めます。入院期間も昔に比べると大幅に短縮され、手術翌日からリハビリを行い、最短1週間程度で退院することも可能です。歩くことや日常生活動作を行うこと、股関節の周りの筋肉を鍛えることがリハビリになります。
先天性の臼蓋形成不全の方は、片側だけでなく両側が同様に悪くなることが多いです。そうした方には、両側同時に手術を行うこともできます。その場合、入院が1回で済むため時間的にも経済的にも負担が軽くなり、両脚の長さが揃うためリハビリも進めやすいなどのメリットがあります。
人工股関節置換術の術後は痛みから解放され、それが持続するものであり、短期的にも長期的にも優れた手術です。手術に至る前に、生活習慣の見直し、減量、痛み止めの服用などの保存療法を行うことも大切です。
当院では多た血小板血漿(けっしょうばんけっしょう)(PRP)や培養幹細胞(ばいようかんさいぼう)といった再生医療も導入しています。股関節の痛みや悩みを忘れた生活を送るために、納得のいく治療法を選択してください。