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病気のはなし
【消化器内科】

消化器がんに高精度の内視鏡治療を実施

近年、食道や胃、大腸など消化器の検査・治療は臓器を切除しない内視鏡が主流となっています。
ただし、最新技術を取り入れ、高度な技術をもつ医療機関で受けることが重要です。当院の消化器内科では、あらゆる部位において高度な検査・治療を実施しています。

消化管の検査は拡大内視鏡で精査 再発リスクへの2次予防も重要

 食道や胃、肝臓・膵臓や大腸などの消化器は、日本人がかかりやすいがんの部位として挙げられます。がんの死亡者数をみても、男性は肺がんに次いで大腸がん、胃がん、膵臓がん、肝臓がんが多く、女性は大腸がんが最も多くなっています(上図参照)。
 食道がんは、食べたものを胃に送れない通過障害を起こし、喫煙者、飲酒者にリスクが高く、隣接する咽頭や喉頭にがんを発症するリスクも高いので注意が必要です。
 胃がんは、原因であるヘリコバクターピロリ菌が見つかったら除菌することが重要です。近年の除菌率は9割程度で胃がんの予防に重要な役割を果たしています。
 大腸がんの中でも、直腸のがんは人工肛門造設となってしまう場合もあります。検診での便潜血検査は非常に大切であり、加えて大腸内視鏡検査を受けることによって、がんではなくても、ポリープが見つかり治療することによってがんを抑止することができます。
 当科では多くの食道、胃、大腸の内視鏡検査において、高精度の拡大内視鏡を採用しています。がんの疑いで来院する紹介患者さんのほか、当院で治療を受けたあと再発を防ぐための経過観察で訪れる方も多くおられます。

ESD の治療は高度な技術を駆使慶應義塾大学病院との連携も

 当科は食道、胃、大腸がんの治療も内視鏡で積極的に行っています。毎週水曜日には消化器内視鏡治療のエキスパートである慶應義塾大学医学部内視鏡センターの加藤元彦教授が担当し、難しい症例にも幅広く対応しています。科全体ではESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)を年間200例近く実施するなど豊富な実績を有しています。
 ESDは早期がんやその疑いの病変を内視鏡により用いて切除する治療法です。外科手術と違って臓器を温存でき、患者さんの体への負担が少ないのがメリットで、全身麻酔も必要ありません。当院では治療前の所見で、がん細胞のタイプ、がんの広がり方、深さなどを慎重に判断し、確実な治療を行っています。
 また当院では、ESDをはじめとする内視鏡治療の成績や手法、病理所見に応じた病理結果、その後の経過についてのデータベースを患者さんの了承を得て作成しています。こうした取り組みによって質の高い内視鏡治療を提供できるよう日々研鑽に努めているところです。

肝胆膵分野の検査・治療の充実も 当院消化器内科の大きな特色

 当科のもう一つの大きな特徴として挙げられるのが、私自身も専門としている胆道(胆のうや胆管)や膵管の内視鏡検査です。近年主流となっているERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影:内視鏡を使って胆道や膵管に造影剤を注入し、レントゲンで見る検査)はもちろん、新たな方法である超音波内視鏡(EUS)を使った検査・診断も実施しています。胃カメラの先端に超音波を出す装置がついたもので、音波が跳ね返ってくる現象(エコー)を利用して、粘膜の下の構造や消化管外の病変を詳しく調べることができ、消化管の粘膜下に発生した腫瘤や膵臓や胆管を中心とした病変の精査に重宝します。
 また、EUSを用いた精査として、EUS -FNA(超音波内視鏡下穿刺吸引法)も多数実施しています。EUSによる観察のもと、腫瘤に対して細い針を刺し、細胞を回収する方法です。 こうした最新の検査方法によって、早期かつ正確に、膵がんや胆管結石、腫瘍などを診断できます。
 過去に胃や膵臓や胆管などのお腹の手術を受けた方は、通常のERCPを実施するのが困難でしたが、昨今は「バルーン内視鏡」を使用することで内視鏡での治療が可能となっています。さらに通常のERCPでは対処できない結石に対しては、胆管を直接視ることのできる胆管鏡を用いながら、EHL(電気水圧衝撃波胆管結石破砕術)という治療法により、結石を砕きながら取り除くことができます。いずれの検査も当科で実施することが可能です。
 胆道や膵臓の病気は見つかりにくく、検査・治療は高度な技術が必要であり、医療機関を選ぶことが大切です。当科の肝胆膵分野は外科、放射線治療科、臨床腫瘍科などが集まって検査・治療方針検討会議を行い、患者さんにとって最適な治療につながる体制を備えています。
 がんに対する内視鏡検査以外に、炎症性腸疾患(IBD)に取り組むスタッフが3名いるのも当科の特徴です。内視鏡検査でこうした病気が見つかる場合もありますので、ぜひ継続的に消化器内視鏡検査をお受けください。

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