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病気のはなし
【総合内科・感染症内科

ユマニチュードで安心の医療を実現

東京医療センターは、2012年に総合内科医の本田美和子医師によって、日本に「ユマニチュード」を初めて 導入した中心的な施設です。現在も日本のユマニチュード研究・実践のパイオニアとして、医療・ケアの現場 で広くこの技術を取り入れています。

ユマニチュードの4つの柱
ユマニチュードの4つの柱

安心して医療を受けていただくために 患者さんへのケアの質がますます重要に

超高齢社会を迎えた日本では、医療技術の進歩に よって多くの命が救われ、長く生きられる時代になりました。一方で、高齢や認知症、重い病気などにより、心身が脆弱な状態で医療を受ける患者さんが増えています。そのために、治療を受ける患者さん一人ひとりが安心して医療を受けられるよう、「どのように関わるか」というケアの質がますます重要になっています。

その実践として東京医療センターが力を入れているのが、「ユマニチュード」です。

ユマニチュードは、フランスで考案されたケアの技法で、日本では2012年に東京医療センターに導入されました。以来、当センターは日本におけるユマニチュード の研究・実践・人材育成の中心的な施設として、その普及に取り組んでいます。

認知症の方や病気によって意識が低下している方 は、医療者が治療の必要性を丁寧に説明しても、目の前にいる人が誰なのか、何をされようとしているのかを 理解できず、不安や恐怖から治療やケアを拒否してしまうことがあります。しかし、そのような患者さんにも、 必要な医療を安心して受けていただかなければなりません。

ユマニチュードは、そのためのコミュニケーション技術です。医療者の「良くなってほしい」「安心してほしい」という思いを、患者さんが受け取ってくれる形で届けるための具体的な方法といえます。

「あなたは大切な存在」のメッセージが ユマニチュードの大切な考え方

基本となる柱は、「見る」「話す」「触れる」「立つ」の 4つです。正面から相手の瞳を見ること、穏やかな低めの声で話しかけること、自分が尊重されていると感じてもらえる触れ方をすること、そして可能な限り立つ・歩く力を支えること。この一つひとつを、経験や勘ではなく、科学的な根拠に基づく職業技術として実践するのがユマニチュードの特徴です。

たとえば、耳が遠い方には、つい大きな声で話しかけてしまいがちです。しかし、大声は本人に「怒られている」という印象を与え、不安を強めてしまいます。言葉 の選び方だけでなく、声の高さや速さ、表情や視線まで含めて、自分が発している情報を意識し、「あなたは大切な存在です」というメッセージを伝えることが、ユマニチュードの大事な考え方です。

こうしたケアは、患者さんの安心感や満足度の向上につながるだけでなく、研究では向精神病薬の使用量の減少なども報告されています。また、歩くことを積極的に支えることで身体機能の維持にも役立ち、生活の質(QOL)の向上も期待されています。実際に、ご家族がケアの様子をご覧になり、「こんなに表情が豊かになるとは思わなかった」「まだこんなことができるのですね」と驚かれる場面も少なくありません。

入院高齢者の向精神薬の処方率の変化
拡張現実を用いた  ユマニチュードシミュレーション教育システム

複数のユマニチュード指導者が在籍 地域住民・介護家族向けの講習会も開催

東京医療センターでは現在、複数のユマニチュード 指導者・インストラクターが在籍し、週1回の病棟ラウ ンドを通して各病棟のケアを支援しています。看護部 と連携した院内体制のもとで技術の定着を図るととも に、全国の医療・介護従事者を対象とした研修や、地域住民・介護家族向けの講習会も開催しています。

さらに現在は、ケアの様子を映像やセンサーで分析 し、視線や声かけ、触れ方などを客観的に評価する研 究も進められています。AIに良いケアを学習させ、拡張 現実などの先端の科学技術を活用して自分のケアをリアルタイムで振り返る教育システムの開発にも取り組んでおり、ケアの質をさらに高める新たな挑戦が続いています。

あなたは大切な存在です——そのメッセージを確かな技術として届けることが、ユマニチュードの本質で す。東京医療センターは今後も、ユマニチュードの実 践・教育・研究を通じて、一人ひとりの尊厳を大切にした医療とケアを広げ、日本の高齢者ケアをリードする役割を担っていきます。

総合内科 本田美和子 医師

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