再生医療研究室

研究室の紹介

形成外科は、様々な形態や機能を失った患者さんに対して、正常に近い状態を作り出す分野です。形態や機能の再建は、いわゆる再生医療技術の臨床応用の場であり、実際に患者さんに接して手術を行うという点で、形成外科医は再生医療分野で重要な役割を果たしていると言えるでしょう。

形成外科領域においては、まずScarless wound healingは長年の研究課題です。実際の臨床現場で手術手技や創傷被覆剤の工夫、成長因子の投与などが試みられてきましたが、搬痕を軽減こそしても消失させるまでには至っていません。一方、骨髄より採取される間葉系幹細胞(MSC) は、間葉系への多分化能を有するとともに、生体に移植するとその環境に合わせて分化することも報告されており、この現象は間葉系幹細胞が皮膚創傷の再生にも関与する可能性を示唆しています。私たちはこのMSCの能力に注目し、ラットや豚のMSCを皮膚の創に移植すると搬痕形成が抑制され、正常に近い皮膚構造が再生されることを証明し、報告しました。
(Satoh H et.al.:Cell Transplant,2004,13(4):405-412、Ochiai H et al.: Regenerative Therapy. 2017, 7:8-16 落合博子ら.形成外科 2017, 60(11):1232-1239)。

2006年6月に、国立成育医療センターの梅澤明弘医師との共同研究で、「ヒト骨髄由来間葉系幹細胞を用いる事による皮膚創傷治癒の搬痕形成抑制」として臨床応用を実施いたしました。

*特願2005-51661 「瘢痕のない創傷治癒能を有する細胞およびその調整方法」
佐藤博子、梅澤明弘、貴志和生 2005.2.25.出願

室長 落合 博子

広範囲の皮膚欠損や関節における創傷は特に瘢痕拘縮を生じるという点で、治療に難渋することがあります。そのような悪条件の創傷を対象とした人工真皮を開発中で、マウスによる実験を行なっています。本研究は、コラーゲン医療材料研究を進めている工学研究機関との共同研究で、特許出願を計画しています。また、顔面神経麻痺に対する顔面の動きの再生を目指して、ラットの咬筋神経や舌下神経を利用する実験を行い、臨床応用を目指しています。その他、企業と連携して、脂肪幹細胞移植による肌質改善効果のデータを応用し、外用剤の製品化も目指しています。

室長略歴

1991年3月 東北大学医学部卒業
1991年6月 山形県長井市立病院外科研修
1994年5月 慶応義塾大学形成外科学教室入局
1999年4月 日本形成外科学会専門医
2003年4月 国立病院東京医療センター形成外科医長
2003年5月 第2回日本再生医療学会優秀演題
2005年9月 医学博士
2007年5月 臨床研究センター聴覚・平衡覚研究部再生医療研究室長併任
2019年9月 “The Best Poster Award”ASPS (American Society of Plastic Surgery) the Meeting
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