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リウマチ・膠原病内科サブスペシャリティーコース

理念

  • 内科疾患、リウマチ・膠原病に関する深い学識と高い臨床実践力を備えた専門医を育成する。
リウマチ膠原病内科 科長 鈴木 勝也

科長より

鈴木 勝也

 当院の内科専攻医プログラム(リウマチ膠原病内科サブスペシャリティーコース)に興味を持っていただきありがとうございます。

「挑戦しがい」のある魅力的な内科領域

 リウマチ・膠原病分野は、かつて「難解で捉え所がない」と言われていた領域ですが、近年著しい進歩を遂げています。疾病の分子レベルでの理解が深まり、新薬の登場や治療戦略の確立も進みました。関節リウマチでは、関節の腫れや痛みのない寛解状態となる割合は、この20年間で飛躍的に向上しました。
 さらに、免疫系は自己免疫のみならず、感染症・がん・精神神経疾患とも深く関連していることから、その巧みな機構の理解と調節への挑戦は医学全体の中でも重要な位置を占めています。また、超高齢社会を迎える中で、骨・運動器系の維持・機能回復が“健康長寿”にとって不可欠という観点からも、リウマチ・膠原病内科の医療需要はますます高まっています。
加えて、自己免疫疾患は女性の罹患率が高く、性差を考慮した医学という観点からも注目されており、従来の診療科の枠を超えた視点を持てる分野でもあります。他の分野と同様に専門医の地域偏在があり、都市部以外は需要過多の状況が続いています。こうした背景から、この領域は挑戦しがいのある魅力的な内科領域として、今後もその価値を持ち続けることでしょう。

多彩なキャリアパス

 本プログラムの研修修了後には、多様な進路が開けています。

  • 当科でフェローを経てスタッフ医師として診療・教育・研究に従事する。
  • 国立病院機構病院等のスタッフ医師として診療・教育・研究に従事する。
  • 大学・研究機関で診療・教育・研究に従事し次世代の育成や学術貢献を行う。
  • 診療所の開設者としてプライマリーケアと専門医療を提供し地域に貢献する。
  • 官公庁・製薬企業・生命科学・情報技術分野等で臨床経験を活かし活躍する。

 いずれの進路を選ぶにせよ、将来「リーダーとしての職責」を担えるよう、研修段階から指導・支援を行います。

研修修了者からのメッセージ

小西 美沙子(2020年修了)

 当院のリウマチ膠原病科研修は、主体性を持って診療に当たることが出来、希望があれば早期より外来(初診・再診)も担当をすることも出来ます。当科は全身に症状がでうるため、他科との連携が重要ですが、当院は他科ともとても相談しやすい環境です。関節エコーも勉強できます。勉強会や学会も多く、モチベーションが高まります。平日は当直医制、休日は当番制のため、終業後はしっかりと自分の時間を持ち、メリハリのある生活を送ることができます。また福利厚生も充実しています。私自身、産休や育休をいただき、妊娠出産その後の育児にも配慮していただけます。指導環境が整っており、興味があれば、研修医や専攻医でも国内の学会発表はもちろんのこと、英語論文執筆や国際学会での口頭発表の貴重な機会を得られ、非常に恵まれた環境です。当院に所属しながら、学位を取得することも可能です。またカンファレンスも非常に勉強となるものであり、当院での当科の研修はお勧めです。

羽磨 智史 (2023年修了)

 当院のリウマチ膠原病科の特徴として、総合内科や3次救急もある病院のため市中病院にもかかわらず幅広い膠原病疾患を経験することができます。日々の診療に関しては主体性を持ちつつ、上級医の先生とのチーム制であったり週に1回のカンファレンスがあることから常に相談しやすい環境で安心して研修を行うことができます。また科で超音波機器を保有しているのでいつでも関節超音波検査を自分たちで行うことができ、エコーの技術を学ぶこともできます。科長の初診外来のファーストタッチもさせて頂けるため外来診療を学ぶこともでき、学会発表や論文発表なども指導していただける環境のため市中病院でありながらもアカデミックな面も学ぶことができます。是非当科での研修をお待ちしております。

レジデントからの言葉

田畑 広樹

(2022年より研修開始)
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リウマチ・膠原病内科サブスペシャリティーコースを考えている人へのメッセージ

 当院は立地も非常によく、駒沢公園も近いため、穏やかな環境で過ごせます。平日休日問わず、夜間は当直医制であり、夜に呼ばれる心配もありません。各科の垣根も非常に低く、働きやすい環境だと思います。今後当院での研修を考えてくださる方がいらっしゃれば幸いです。

研修の概要

充実した症例経験と専門知識の習得

 病棟診療では、主治医の指導の下、担当医として診療にあたります。診療日は毎朝、病棟診療医チーム内で患者情報の共有を行い、病棟ラウンドを実施しています。指導医と直接ディスカッションをして、課題解決へのアプローチの方法のフィードバックを受けることができます。週一回火曜日午後に臨床カンファレンスを開催し、治療方針の確認を行なっています。
 外来診療では、週一回初診患者のファースタッチを行い、その後、指導医の診療に陪席しフィードバックを受けます。また、緊急に外来受診が必要となった患者の初期治療を担当することもあります。研修4年目には、入院担当患者の継続診療を中心とした専門外来、初診外来、関節超音波検査外来を担当します。随時指導医に助言を求めることができ、専門外来診療の実践経験を積むことができます。

豊富な研修機会

 関節を中心とした超音波検査においては、指導医の監督の下で検査者として症例を経験し、日本リウマチ学会登録ソノグラファーの資格の取得を目指します。また、動画教材を用いた身体診察法の学習、偏光顕微鏡による関節液の結晶観察、ダーモスコピーによる毛細血管の観察、唾液分泌量測定など、当科の診療に必要な診察法や検査法を取得できるような環境を整えています。さらに、専門医取得に必要な整形外科手術見学、病理解剖および臨床病理カンファレンス(CPC)、機構および院内のオンライン学習を含む研修、各種学会や研究会、医薬品情報説明会、地域連携会など、さまざまな研修機会を提供しています。

安心して働ける環境

 平日は時間内に業務が完了できるように配慮をしています。夜間および休日は内科として、月に2−3回程度の当直業務を担います。内科入院患者の平日夜間及び休日の時間帯は内科当直医がファーストコールへの対応をしています。また、休日の当科の対応はオンコール当番制となっています。上級医および救急科、麻酔科、放射線科、診療看護師など院内多職種によるバックアップ体制が充実しており、また当直の翌日は帰宅して休めるようにチーム内で業務調整を行うなど、安心して働ける環境が整備されています。

盛んな研究活動

 専攻医期間中の研究活動も盛んに行っています。日常臨床の実践の中で最新のエビデンスとなる文献の検索や精読を行うとともに、興味深い論文については科内の抄読会でディスカッションが行われ、医学論文の批判的吟味の経験を積むことから始めています。次に、自身が経験した症例を丹念にまとめ、過去の報告との相違点を明らかにする症例報告、日常臨床での疑問の解決のために当科の過去の症例を分析し仮説を構築する症例集積研究などの臨床研究へ展開していきます。研究活動を通じて、自らの臨床を振り返り、将来の診療に役立てていく手法を学んでいきます。

国内外学会での発表と論文執筆

 研究活動の成果は、日本内科学会や日本リウマチ学会の学術集会、地方会、さらには米国、欧州、アジア太平洋リウマチ学会等で発表が行われ、国内外の学術雑誌へ論文としての報告を行っています。研究テーマについては、最初は指導医が与えますが、その後は自らの興味に応じて自身で展開してけるように指導をしています。当科には多彩な専門性を持つ多数の指導医が所属しており、充実した指導を受けられる体制となっています。

手厚い研修支援体制

 専門研修を進めていく上で必要な支援を事務部、教育研修部、診療部、院内関係部署において実施しています。病院敷地内に専攻医が比較的安価で居住できる寮が完備され、研修に集中できる環境が整備されるなど、生活面でもさまざまな支援体制があります。

基本方針

 本プログラムは、日本専門医機構が定める新専門医制度に基づき、内科専門医、膠原病・リウマチ内科専門医の取得を目指す医師を育成します。研修対象は初期研修を修了した医師です。研修期間は並行研修を行った場合4年間となります。内科専門医研修期間の3年間のうち、通常枠では1年間、地域枠では1.5年間の当院内科プログラムの連携施設での研修が必要となります。シーリング地域内の連携施設での研修期間には上限が定められており、上限を超える場合はシーリング地域外の連携施設を選択する必要があります。内科プログラムの全体の詳細は、専門研修プログラムの内科プログラム紹介をご覧ください。

 研修4年目に内科専門医試験、研修修了後の5年目に膠原病・リウマチ内科専門医試験を受験し、合格すれば専門医資格を取得できます。なお、研修修了後の5年目については、研修状況等を考慮し、当院の規定する要件を満たした場合には、当科の期間職員(レジデント)として1年間引き続き研修を継続する機会が与えられます。なお、研修成績が極めて良好な場合には、5年目に期間職員(フェロー)として1年間、指導医を目指すための研修を受けることができる道も開かれています。

 本プログラムは、厚生労働省、日本専門医機構、関連学会、国立病院機構、連携施設等および当院の方針により将来変更される可能性があります。

診療の特徴

 当科は1980年に専門内科として開設以来、人口約148万人の東京都区西南部二次医療圏(目黒区、世田谷区、渋谷区)のリウマチ膠原病診療の基幹施設として地域の医療を支えてきました。国立病院機構の担う政策医療のうち免疫異常、骨・運動器疾患に関する医療の提供、教育研修と研究の役割に加え、慶應義塾大学医学部内科学教室の教育研修施設としての役割も担っています。

 診療では、炎症性関節炎、膠原病および類縁疾患、自己炎症性疾患などの領域全般を対象としており、2024年度の外来通院患者数は約2,338名、入院患者数は約214名でした。関節リウマチ、脊椎関節炎、全身性エリテマトーデス、血管炎等に対する生物学的製剤による治療実績が豊富であることが当科の特徴です。地域連携や院内各科からの紹介される未診断例が多く、早期の的確な診断により臓器障害を進展させない治療の実践に繋げています。

 研究では、機構の免疫ネットワークによる臨床研究、大学と共同の臨床および基礎研究、新規薬剤治験、薬剤市販後調査、当科独自の臨床データベースを用いた臨床研究、ウエアラブル機器を用いた臨床研究など数多く実施しています。それらの成果は国内および国際学会での発表ならびに論文として報告しています。

 教育研修では、診療科内での個別指導、臨床カンファレンス、院内および機構による各種教育研修に加え、近隣の医療施設との研究会なども積極的に開催をしています。

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