治療装置について
外部放射線治療装置(リニアック)
当院には、2台の外部放射線治療装置(Clinac iX、TrueBeam)が稼働し、患者の病態に応じた装置を選択して治療を行っています。両装置に共通した機能には、病巣周囲の正常組織への影響を最小限にしながら病巣形状に適した照射を行うVMAT(回転型強度変調放射線治療)が可能であること、治療前に寝台に寝た状態でⅩ線・CT画像を取得し、照射位置ずれを最小限に補正して照射を行うIGRT(画像誘導放射線治療)システムを搭載していることです。また両装置にオプション搭載しているIGRTシステムにはExacTracがあります。ExacTracは、赤外線カメラによるナビゲーションシステムと治療室内に設置されたX線撮像システムにより構成され、ミリ未満の精度で正確に素早く照射位置を補正することができます。
2019年度に導入されたTrueBeamには、呼吸の動きを監視し治療に最適な呼吸タイミングで照射できる機能に加え、単位時間当たりの照射線量が従来の約3倍となり非常に短時間でピンポイント照射を行う機能があります。合わせて導入した光学的患者ポジショングシステム(AlignRT)は、高解像度カメラを使用して被ばくも侵襲もなく患者皮膚表面を追尾し、正確な位置合わせ(体表面誘導放射線治療:SGRT)ができます。照射中もリアルタイムに動きを監視し、許容誤差を超えた動きを検知した場合には自動的に照射が一時停止されます。当院では、特に乳腺の放射線治療に積極的に利用しています。
治療計画装置
治療計画CT装置(SOMATOM Definition AS64 Open)は、呼吸の動きを加味した4DCT撮影、低線量撮影が可能です。CTガントリーの開口径が大きく、様々な治療体位に柔軟に対応できます。
放射線治療に必要な照射条件(照射範囲、照射角度や照射線量など)を治療計画装置にて計算します。当院では、外部放射線治療用の治療計画装置Eclipseを8台、小線源治療用の治療計画装置Eclipse, Variseedを有しており、患者の病態に応じた体内での線量分布を計算、評価できる体制となっています。
また治療計画支援装置MIM Maestroを使用することで、様々な臨床画像をより適切に治療計画画像に反映させることができます。これは病巣及び正常組織の正確な範囲をより正確に把握することを可能とし、再治療や腫瘍の縮小に伴う治療計画の変更の大きな手助けとなります。
小線源治療
小線源治療とは、鉛筆の芯のような線源を体内に挿入し、病巣に放射線を集中的に照射する技術です。当院では、イリジウム192線源を用いた高線量率密封小線源治療装置、ヨウ素125シード線源永久挿入による前立腺癌小線源療法を行っています。
イリジウム192線源を用いた高線量率密封小線源治療装置(RALS)
治療装置(BRAVOS)は、遠隔で操作するという意味のリモートアフターローディングシステム(RALS)装置とも呼ばれます。約1mmサイズの192Ir(イリジウム)線源を隣室から遠隔操作で目的部位に挿入し,人体の内部から放射線を照射する装置です。線源を導くためのアプリケータが挿入あるいは停留可能な部位であるなら,どこでも治療可能です。おもに子宮腔内の病巣に対して行っています。近年では、治療計画画像にCT・MRI画像を用いることで、病巣や周囲の正常組織を考慮した3次元治療計画によるIGBT(画像誘導小線源治療)を行っています。
ヨウ素125シード線源永久挿入による前立腺癌小線源療法
2003年に国内初のヨウ素125シード線源永久挿入による小線源療法を当院で実施し、5000例を経験致しました。重篤な合併症も見られておらず、この治療の高い有効性と安全性が確認されております。近年では前立腺に近接する直腸への副作用を防ぐために、前立腺と直腸の間を拡げるゲル状の物質(SpaceOAR)を注入することができるようになり、当院でも積極的に使用しています。治療には麻酔に要する時間を含めて2時間程度かかります。
詳細は、診療部泌尿器科ホームページ内および同ページ小線源治療案内をご参照ください。
MR-CTを用いた術後評価:赤線が前立腺、緑の帯は尿道、下方の青は直腸で白い塊が前立腺と直腸の間に注入したスペーサーゲル。黄緑の芯は線源で、前立腺を覆う黄緑線で囲まれた範囲が放射線の照射線量、白線はその1.5倍の線量であり、前立腺内部には非常に高い線量が照射されていることが分かります。