放射線治療

放射線治療とは

放射線治療は、からだの外や内側から放射線を病巣に集中的に照射する治療です。主な対象はがんです。
がん細胞は多くの放射線を受けると生き続けることができなくなり、時間をかけてだんだん消滅していきます。十分な量の放射線が照射されると、がん病巣が消え、病気が治り、患者さんは健康に回復します。丁寧な治療計画と最新技術を用いれば、今や必要な範囲以外に放射線はほとんどあたりません。治療は数分間寝ているだけの通院で済み、手術や薬物治療に比べ安楽・安価です。患者さんの中には仕事と両立しながら数週間の治療に通われている方もいます。
早期がんは放射線だけで治療が済み、進行度や体力により薬や手術を組み合わせます。切除不能がんや転移のある患者さんも長生きするチャンスが増え、高品質な照射はがんに対する免疫力をむしろ高めてくれます。放射線治療の利点の一つは臓器や機能の温存です。生活の質を維持し、麻酔は必要なく、高齢者や体力のない方にも適しています。がんによる痛みや出血、転移による苦痛も和らげ、薬を減らせる場合も有ります。
放射線自体は目に見えず、体にあたっても何も感じないため、怖がる方も少なくありませんが、放射線を上手に利用して病気を治し、心身を癒す治療が放射線治療なのです。なお、がん治療としては多くの利点がありますが、小児や若い方に対する被曝については慎重な対応も必要となります。

当院の治療方針

がんの状態に加え、あなたの体力や人生観に応じて個別に適切な治療法を検討します。放射線治療を最大限活用すると同時に一人一人の想いに寄り添うように努めています。当院の治療指針は基本的に欧米学会の水準に合わせた上で、国内の指針も尊重します。薬物療法や手術との比較や併用を含め、他科や他院との連携も大切にしています。
当院は小線源治療の経験が世界有数ですが、近年は高精度なピンポイント照射にも力を入れ、すべてのがんに対して根治から緩和まで幅広く、患者さん毎に最適と思われる治療を提供します。

当院の実績

1990年代は年間新患数が200名程度、最近は年間700名以上、治療件数は800件以上です。この20年間で1万5千名のがん患者さんを治療しており、前立腺4500名、乳腺3500名、頭頸部、消化器、呼吸器各1200名、婦人科600名などは特に経験が豊富です。小線源治療では泌尿器、婦人科、食道などに5000件ほどの実績があります。

放射線治療スタッフ

放射線治療センターには、医長を含む放射線治療専門医、放射線治療専門技師を含む診療放射線技師、がん放射線療法認定看護師を含む数名の看護スタッフ、医学物理士および物理スタッフ、受付事務と多職種で構成されたチームで成り立っています。

放射線治療の手順

  1. 受付
    放射線治療は受付スタッフの挨拶から始まります。診察日時の予約を相談するとともに、あなたの日常生活や就業状態、通院方法などについては問診票を用いながら、病気をどのように受け止めているかは看護スタッフが個別に確認します。
  2. 診察
    放射線治療医が診察し、検査結果と総合して検討した治療方法(身体のどの部位に、どのくらいの放射線を照射するか、副作用はどうか)をお話しします。がんの性格やあなたの心身の状態も考慮します。
    照射は数週間にわたり平日毎日行うことが一般的ですが、1回から数回で終わることもあります。病気や治療に関して気軽に質問ができるように専門看護師が同席ないし個室対応し、相談を受けています。経済的な問題にはがん相談室のスタッフが対応します。
  3. 治療計画
    実際に放射線を照射する前に、最適な体位、範囲や方向を決めるための計画を行います。からだの固定具を作成し、仰向けに寝た状態でCTやMRIを撮影します。人違いをしないように写真を撮らせていただきます。治療部位の皮膚には消えにくいペンでしるしを付けます。部位によっては呼吸を調整してもらう場合もあります。
    計画CTの撮影後にお帰りいただき、その後数日から2週間の時間をかけて、スタッフが綿密な治療計画を作成し、複数で確認し、技師が照射の準備を入念に行います。計画の結果をもとに最適な方法を放射線治療医が最終決定します。治療の半ばで計画を見直すこともあります。
  4. 毎回の治療
    計画のときと同じ状態で治療台に寝ていただき、位置を正確に合わせてから数分間の照射を技師が実施します。痛みも何も感じません。乳房の場合には体表面を赤外線で把握し、正確に再現します。部位によっては息止めなどの呼吸調整を行います。治療期間中は毎回、看護師らが挨拶しながら体調を確認し、毎週ないし体調に合わせて医師による診察があり、副作用や病状について相談することができます。
  5. 経過観察
    放射線治療が終了したら、数か月ごとに放射線治療医の診察を数年間行います。病状や再発転移、後遺症、他疾患の合併についての確認が主目的です。依頼元の医師や病院の受診のみをお願いすることもあります。何年も受診していない場合でも、後遺症や再発を疑うような症状が出た場合には受付にお問い合わせください。照射技術の進歩のおかげで重篤な後遺症は近年ほとんど見られなくなりましたが、困るような場合は是非ご連絡ください。

各がんの具体的な治療方法

照射技術と用語解説

治療装置について

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