視覚研究部

研究部の紹介

人間は外部から取り入れる情報の多くを視覚情報に頼っており、目はその情報を取り入れる重要な感覚器です。目には様々な種類の病気(眼疾患)がありますが、これまでの長年にわたる研究のおかげで、現在では多くの眼疾患の治療が可能になってきました。しかし、眼疾患のなかには今でも治療法が確立していないもの、あるいは、病気にいたる原因すら解明されていないものがいまだに数多く残されています。例えば網膜色素変性や黄斑ジストロフィを代表とする遺伝性網膜疾患については、全ての患者さんに対して有効な治療を提供できる段階には至っていません。

視覚研究部・部長 角田 和繁

視覚研究部では、これまでに様々なイメージング技術(網膜内因性信号計測、光干渉断層計(OCT)、眼底自発蛍光)や電気生理学的検査(網膜電図:ERG)を用いて、網膜の生理学的機能を客観的に評価する研究を行ってきました。また、東京医療センター網膜変性症外来においては全国より多くの遺伝性網膜疾患の患者さんを受け入れ、難治疾患の診断および生活支援等を行ってきました。2007年には、これまで原因が不明とされていたオカルト黄斑ジストロフィ(三宅病)の原因解明のためのプロジェクトを立ち上げ、2010年にはこの疾患の遺伝学的原因を世界に先駆けて解明しました。

さらに2010年より遺伝性網膜疾患の全国共同研究、Japan Eye Genetics Consortium (JEGC)を設立し、日本人における遺伝性網脈絡疾患の原因解明、ならびに疾患データバンクによる患者実態の把握に努めてきました。現在、様々な遺伝性網膜疾患の詳細な病態を分子遺伝学的に解明するべく、全国および世界各国の大学や研究施設との共同研究を行っています。

また、これまでの研究成果を生かして、視覚生理学研究室(藤波芳室長)を中心に、眼科遺伝性網膜疾患外来における遺伝学的検査(遺伝子診断)、遺伝子カウンセリング等を行っています。さらに、新規治療推進センター(リンク準備中)では、国際的臨床治験に必要な特殊検査機器を取り揃えており、遺伝性網膜疾患に対する臨床治験を施行する準備が整えられています。

視覚生理学研究室(藤波芳室長)では、電気生理学、臨床遺伝学、遺伝生物学、臨床疫学等さまざま研究手法を用いることで、遺伝性網膜疾患の病態解明に取り組んでいます。また、これらの研究結果を患者さんの治療に応用すべく、遺伝性網膜疾患の治療を専門的に行うための専門外来部門(眼科:遺伝性眼科疾患外来、臨床異伝センター:遺伝性網膜疾患外来)を開設しております。現在、大学院生4名、視能訓練士1名、研究補助3名が眼遺伝学の基礎的研究ならびに臨床研究を行っています。また、すでに遺伝性網膜疾患に対する一部の臨床研究・治療治験が開始されており、今後、様々な疾患や治療法に対応すべく、治療に直結する臨床・基礎研究・治療治験導入を推進しております。

ロービジョン研究室(野田徹室長)では、眼内レンズ挿入眼の眼底視認性を評価するためのヒト眼球モデルの開発や、眼内レンズが挿入された眼球モデルを用いて実際に網膜に投影される映像の撮影を可能とするデバイスを開発することにより、 眼内レンズの機能評価、さらに今後の眼内レンズ開発に向けた研究を行っています。また、白内障などの混濁による光の散乱の視機能への影響を定量評価する測定機器の開発を大学工学部との共同研究で行っています。

また2019年より、感覚器センター聴覚・平衡覚研究部(松永達雄部長)と共同で、視覚聴覚二重障害患者のための疾患レジストリーを開始しました。これは、先天性疾患などにより、目と耳の両方に障害のある患者さんの個人情報、疾患情報、遺伝情報等を登録して、今後の治療やリハビリに役立てるもので、感覚器疾患領域では日本で初めての試みとなります。

外来診療について

遺伝性網膜疾患および原因不明の視覚障害を対象とした専門外来(担当角田)については、病院眼科ホームページをご覧ください。受診には紹介元からの診療情報提供書が必要で、完全予約制となっております。視覚障害の原因を詳細に精査し、疾患の性質や現在の病態について詳しくご説明したうえで、最適な治療法、生活・仕事上の相談等について、幅広いアドバイスを行っております。

また、臨床診断が確定している方で、特に遺伝相談、遺伝子検査、治験相談をご希望の方は、眼科遺伝外来(担当藤波)をご利用ください。遺伝性網膜・視神経疾患に対する遺伝子検査、遺伝カウンセリング、遺伝性網膜疾患の臨床治験等について、詳細な情報提供を行っております。

部長について

  • 1991年、慶應義塾大学医学部卒業。同大学眼科学教室入局。虎の門病院後期専修医。
  • 1996年より理化学研究所脳科学総合研究センター(谷藤研)にて光学計測を用いた側頭葉の形態覚メカニズムの研究に従事。
  • 1999年より足利赤十字病院眼科医長。
  • 2003年、東京医療センター感覚器センター視覚生理学研究室長。光学計測(内因性信号)を用いた網膜機能解析の研究に従事。
  • 2007年、オカルト黄斑ジストロフィ原因解明のためのプロジェクト(SMOP2008)を設立。
  • 2010年より遺伝性網膜疾患の全国共同研究、Japan Eye Genetics Consortium (JEGC)を設立し、日本人における数多くの遺伝性網脈絡疾患の原因解明、疾患データバンクによる患者実態の把握に努めてきた。

専門;網膜電気生理学、網膜イメージング、眼科遺伝学。

連絡先

臨床研究センター 視覚研究部 角田和繁 〒152-8902 東京都目黒区東が丘2-5-1 Tel: 03-3411-0111 Fax: 03-3412-9811 e-mail: shikakukenkyu2★kankakuki.jp(★の部分に@を挿入してください) *上記のメールアドレスでの外来予約、疾患相談等はお受けしていません。外来受診については、東京医療センター地域医療連携室にお問い合わせ下さい。

研究部プロジェクトメンバー

視覚生理学研究室メンバー(2019年)

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